西暦2006年。和暦で言うと、平成18年。
この頃はいったいどんな時代だったのか。
調べたところ、平成で有名なガングロとルーズソックスはもういません。どちらかというと黒髪が回帰している頃。トリノ五輪で荒川静香さんがメダルをとったり、第一次安倍内閣が発足したりしている。スマホはなくガラケーで、まだTwitterが日本に上陸していません(日本上陸は2008年)。何が言いたいのか。通信において、昭和よりは早いですが、今みたいに即時的ではない、のんびりとした時代ということです。
前置きが長くなりましたが、本作はそんな時代に、人生の転換期の1つである高校3年という学年にいる少年たちの夏物語です。
主人公は、受験生の恵太くんという少年。彼の事情に触れるとネタバレになるため伏せますが、ともに夏を過ごすのは、
野球部元エースで「なんとかなるって」と言いがちな雄太くん
進路が決められず悩む、無口なカメラ担当の順嗣くん
几帳面で気が回り、「僕はどっちでもいいよ」が口癖の諭くん
そして彼らがやることは……
ママチャリで淡路島を一周すること。淡路島を知らない人でも「正気か?」となる狂気の沙汰です。彼らと出会う島の大人たちも「……気ぃつけてな」。いや、止めないんかいw。
ゆとり教育世代の時代ですが、この頃の進学率はほとんど50%。推薦で進学できるだろう雄太くんを除くと、受験勉強に本腰を入れていないといけない時期。
なのに彼らは大人たちに狂気の沙汰を決行。
息苦しさから逃げ出したいのか。あるいは最後の思い出を作りたいのか。その両方なのか。
日常から切り取られた場所で、淡路島一周という非日常的なイベントをしているためか、4人はそれぞれふとした時に飲み込んでいた言葉の一部を吐く。ただしすべてではなく、少しだけ。4人とも何か溜め込んでいることは確か。読者は悩める少年たちの心情から目が離せなくなります。
ママチャリで回っている間のシーンは微笑ましく、時々クスッとさせてくれる。そしてその過程で、淡路島観光が疑似体験できます。自分は行ったことないので、「へー!」となりました。
そして前述した通り、スマホの無い時代ですから、思い出の写真を撮って即SNSアップみたいのはありません。そんなことしたら、親にバレるので出来ないですが……ですがとにかく、思い出はカメラ、GPSもない。それが場面を美しくノスタルジー溢れるものにしているような気がします。
本作はまだ未完結のため結末は分かりませんが……台風での感動的な出来事を見る(本当に良かった!)に、爽やかな完結であることは間違いなし。
それぞれに悩みを抱える少年たちは、どのようにして悩みを解消し、前へ進むのか?
お勧めです。
平成の夏の、ひととき。悩める仲良し少年たちの成長を見守ってみてください。