同作者様の作品「クロフォード医師と緋色の約束」の主役である美しい吸血鬼。
その実の兄であるデミトリアスと、その赤い瞳に魅せられてしまった人間の騎士ガラハッドとの、主従と、愛と、渇望が入り混じった儚く熱い物語。
召使いという身分ゆえ、どこか卑屈で諦念を抱いているデミトリアス。
その彼の心を、まるで閉じた花弁を開いていくように。
一つ一つ「愛」されるということ、「大切にされる」ということを教えていく騎士様の、なんと甘いことか…。
互いに、互いのためなら自分の身を犠牲にすることさえ厭わないような危うい均衡の上にありながら、その果てに至る描写までが緻密に美しく描かれています。
詩を読んでいるような美麗な文章の虜です…。
「クロフォード医師と緋色の約束」を読んでおらずとも単体でしっかりと楽しめますし、読んでいると二度美味しいです。
人望厚い勇敢な騎士と、人を酔わせ虜にする美貌の吸血鬼。
その姿をひと目見た時、見初めた騎士の人生は以来、ただひとりの存在に染められていく。
そんな悪女譚の紹介ポップのようですが
この吸血鬼がまたその生育環境のゆえにたいへん卑屈で憎めない。
そしてその真価と輝きは、彼を見初めた騎士により、豊かに鮮やかに開花していく。
この世に数多悪役はいる。
そのすべては厄災をもたらし、傍若無人に見えるだろう。
美貌の吸血鬼も、もしかしたらそんな「悪役」に分類されるのかもしれない。
けれども彼はその厄災を自ら進んでその体に通し、飼い慣らして楽しんでいる。
自らの罪を、自ら罰するように。
それでも彼が快活に笑うのは、傍らに愛する相棒がいるからなのだろうと思う。
恋に溺れ、人生を捧げた英雄。
それを愚かと笑うことなかれ。
誰に称賛されずとも、笑って暮らせる永遠がここにはある。
下手に善意に染まらず、己の欲を突き抜けた先に、彼らのハッピーエンディング(現在進行形)が輝いている。