人を喰らうと恐れられてきた鬼と、人の皮をかぶって暮らす異形。雪の森で凍死しかけた由紀が出会ったのは、恐ろしい怪物ではなく、小さな鬼火で彼女を温めてくれる優しい鬼の少年・凪斗でした。
雪の冷たさと鬼火の温かさが、由紀の絶望と救いに重なる物語です。凪斗との出会いによって、それまで当然だと思わされてきた家の異常と、人間が抱いてきた偏見に気づいていく過程が印象的でした。
重い因習や怪異を扱いながらも、少しズレた呪文や幼い二人のやり取りには微笑ましさがあります。誰かの優しさに救われた少女が、今度は自分の意志で恐怖へ立ち向かう。鬼火のように小さく温かな希望が、雪景色の中に灯る物語です。