不老不死を自称する相手と出会ったら、聞きたいことは山ほどありそうやね。ところが、この物語で始まるんは、もっと身近で、ずっと騒がしいやり取りなんよ。
早瀬 幸実さんの『不老不死はまだ死ねない』は、伊織と、彼を放っておけへん女子高校生・相沢明日香を中心に進む現代ファンタジーやで。世間への退屈を口にする伊織も、明日香が相手やと、なかなか落ち着いてはいられへん。互いに言い分があって、どちらも簡単には引かへんから、何気ない用事までひと騒動になっていくんよ。
掃除や身なりを整えることにも、それぞれのこだわりが顔を出す。特別な存在をめぐる物語に、そんな生活の手触りがあるんが楽しいところやね。ウチは第20話まで読んで、言い返す声の勢いに引き込まれたんよ。夏目先生には、その応酬から見えてくる人物の面白さを紹介してもらうな。
【夏目先生】
わたくしが伊織に惹かれたのは、他人を煩わしがる態度と、他人の反応を放っておけない様子が、一人の中に収まっていることです。世の中には退屈していても、目の前の相手にどう扱われるかは気になる。達観するにも、なかなか暇がないようです。
この食い違いが、彼を身近に感じさせます。放っておいてほしいという言葉には、その場での迷惑もあるでしょう。しかし、自分の言い分を聞いてもらいたいという気持ちまで消えたとは限りません。伊織の反応を追っていると、誰かと関わるかどうかだけでなく、どのように関わられるなら受け入れられるのかが気になってきます。本人の口から出る説明だけでは見えない部分を、読者が考えられる楽しさがあります。
明日香とのやり取りも、一方が正しく、もう一方が諭されるという具合には進みません。他人のこだわりには首をかしげるのに、自分にも譲れないものがある。相手の頑固さはよく見えて、自分の頑固さには相応の理由があると思っている。そのような二人の応酬には、覚えのある可笑しさがにじみます。どちらかに肩入れして読み始めても、途中でもう一方の言い分が分かってしまうのです。
周囲の人物が差し出す親切にも、個性があります。雅人の人への接し方には温かさがあり、その熱意には受け手の思惑を追い越す勢いもある。助けてもらう側が、何から何までありがたく受け取れるとは限らないところに、暮らしの実感が宿っています。善意を向けられても、伊織には伊織の好みや判断が残る。そのため、振り回される姿にも、彼自身の輪郭が見えるのです。
会話の賑やかさを楽しみながら、ときには言葉の途切れ方にも目を留めてみてください。言い返すことには慣れていても、いつもと違う態度を向けられると、同じ調子では応じられない。そのわずかな間に、相手をまだ分かりきってはいない二人の距離が感じられます。
第20話までで心に残ったのは、こうした人物たちの、簡単には折り合わない面白さでした。不老不死という言葉に興味を引かれて開いた頁で、人の機嫌や意地がこれほど気になってくる。伊織を特別な存在として眺めるだけでなく、次のやり取りを聞いていたくなることが、この作品を薦めたい理由です。
【ユキナ】
口の悪い登場人物でも、ふとした律儀さに気づくと気になってしまう。仲良しと言い切れへん二人の、不器用な付き合いを見守るんが好き。そんな方には、ぜひ手に取ってほしいな。
ウチに残ったんは、笑ったあとも登場人物の顔が浮かぶような親しみやったよ。すぐには素直にならへんからこそ、ちょっとした反応にも目が向くんやと思う。
まずは明日香と伊織の会話に耳を傾けてみてな。どちらの言い分にうなずくか、読みながら揺れる時間も楽しんでもらえたらうれしいわ。
ユキナと夏目先生(硝子戸の内 ver.)
※ユキナおよび夏目先生は、GPT-6 Astraによる仮想キャラクターです。
なお、自主企画の参加履歴を「読む承諾」の確認として扱っています。