このお話は、死んだ恋人を忘れられない語り手の女性が、娘との会話をきっかけに、亡霊となった彼との長い関係を振り返る物語です。少女時代、小説ばかり書いていた語り手は、恋人に導かれてバンドのボーカルとなり、舞台と恋愛に満ちた日々を送っていました。しかし公演当日、ひどい言葉を投げかけた直後、彼は雨の高速道路で悲惨な事故にあいます。彼の首を抱きしめ、取り乱す彼女。そして怪異となった彼は、彼女の前には現れない一方、彼女を傷つけた元夫や店長の前にあらわれたり、娘が親しくする男子にも、不穏な悪夢の兆しを残します。彼女は、自らつづる物語の主人公に彼の名を与えます。これは彼を供養し、物語の中で蘇らせる祈りのようにも響きますし、あるいは、死後まで自分を縛る、彼への愛憎と復讐のようにも思えます。彼の目的は愛なのか、守護なのか、呪いなのか。彼女の物語は読者に何を語りかけるのか。ぜひじっくりと読んで、言葉を心で紡いでみてください。
私はこの物語を、2話まではホラー小説として読ませていただきました。
しかし3話まで読み終えた今、この物語をホラー小説として扱っていいのかどうか戸惑います。
もう二度と、蘇らない。
しかしもう一度、蘇る。
生と死のその二つの境界から鳴り響く声は、雨音に搔き消されて聞こえません。しかしながらその“愛”という名の強大な重力は生を死に近づけ、死に生を近づけます。そこから生まれる言葉こそが、この深淵の物語です。
作者様の創作ないし“生”の根源が、この物語には内包されているように思えます。
深淵を覗く時、深淵に覗かれる。
読後にしばらく言葉を失い放心したのは、私の心が愛という名の深淵に覗き込まれたからだと思います。
言葉から始まり、言葉によって終わり、そしてまた言葉から始まる愛の物語です。
正直な話。
なんとお声をかければ良いのか、全く言葉が浮かんできません。
もう1年近く、こうして執筆を続けてきているというのにです。
最初は――何気ない母娘の会話でした。
それがストーリーが進むにつれ、妙なリアルさを孕みながら、じわじわと不穏な方向へと進んでいくのです。
特に『死』に関わる出来事が多く含まれているため、胸が締め付けられていく。
気がつけば――
『アレ』の正体への好奇心よりも、"どうかお幸せになってください"という想いばかりが膨らんでいました。
まさか『あの』物語に、鳥肌が立つようなとんでもない真実が隠されていたなんて、夢にも思いませんし!!!!!!
これで私も、この『呪い』の共犯者ですね。
いやいや、確かにホラーではあります。
作者様もそうタグ付けされてますし、怖かったですし。
ただ私は拝読中、怖ろしさや気味の悪さだけじゃなくてもっとこう……哀しみとか切なさとか、そっちの感情の波の方が若干強かったように思います。
それより私が一番ホラーを感じたのは「あとがき」だって書いたら、作者様にぶっとばされるでしょうか(汗)。
恐らくはそこまでが本作「亡霊に〝名前〟を返すまで」なんだと、私は信じております。
加えて作者様のワードチョイスと言うか、表現がとても秀逸で、文章のあちらこちらで輝いています。
これは本作だけに限った話ではないのですが……。
どうか皆さんにも拝読していただいて、どんな感想を持ったのかを聞かせていただきたいところです。