くるくる天然ふあふあカノジョ
竹藤戸 茉緒
図書館に響く音
青空の下、張り切りすぎた7月の太陽のおかげで
その校舎の表面は、火傷するような熱を帯びていた。
だけど、じらじらと焼きつけてくる灼熱の陽射しは
各教室内に設置されたクーラーに遮られ
カーテンの隙間から、明るい光だけをもたらしていた。
カロロォン カロロォン。
幾つもの氷が、水筒の中で自由に動いてぶつかり合って
軽く爽やかで涼し気な音を立てる。
その音が聴きたくて
その音を鳴らしたくて
手に持った鞄を足に当てながら、意味もなく歩き回った。
天然パーマを編みおろした2つのゴムの先が
歩く度に、ふよんふよんと揺れる。
カロロォン カロロォン カロロォン カロロォン⋯
「水原サン⋯ちょっとうるさい」
席に座って、本を読んでいた
モスグリーンの細縁の眼鏡を、右手の親指と薬指で上げ
静かに言った。
「ええ、なんも喋ってないよ?」
反論する幼なじみに、
「それ。」
「ぉん。めっちゃいい音じゃない?可愛いよねぇ」
「それがうるさいの。
ココ、図書室だから静かにしてください。」
図書室には、
まだあと2人の女子と1人の男子が
それぞれ別々の席に座って本を読んでいた。
ちらりと一瞬目をやるだけで、黙って本を読み続けているが
ページを
この図書室では
「んん、はぁい⋯」
足を、ぷらんぷらんさせて、彼の横顔を見る。
頬杖をついて、彼の読んでる本を一緒に覗き込む。
それに気付いた
諦めた
今度は、クーラーバックの中身を取り出した。
がしゃん。
キュッ。くるくる。パカッ。
がしゃがしゃ。
カロン。
パキッ。ガリィッ。
水筒を開けて、おもむろに氷を食べ出す
氷を砕く音が、図書室に響く。
「⋯ちょっと水原サン、こっち来て。」
「ふぁい」
口いっぱいに頬張った氷を噛み砕きながら
スタスタと歩く
てくん、てくん、と
図書室の奥の本棚の方へ歩いていく。
一番奥の人気のないところで
足を止めた
「⋯アナタね──」
「なぁに?たぁくん」
「その呼び方やめろ。」
「はぁい。何ですか、たなかくん」
「アナタは何故、毎日、図書室に来るの?
図書室に来るんなら、静かにしてください。」
「たぁ、なかくん、私の名前は?」
「は?」
「下の名前」
「
「そう。ざっつらい」
「は?」
「だからぁ」
彼の左耳に内緒話をするように、手を口元に添えて
「すきだから」
フッと、耳に息を吹きかける。
「んなぁッ?!?!」
氷で冷やされた息に首をすくめ、思わず変な声が出た。
「シィーーーーッ。
図書室では静かに。たぁ、なかくん」
右手の人差し指を、精一杯横に伸ばした唇に当てながら
にまにまして
くっそぅ。
この憎らしい小悪魔め。
すぐ目の前にある、くるくる丸まった前髪の真ん中
ペチッ!!
「ィィイッ!!!!」
おでこを押さえて痛がる
と同時に
「ちょっと静かにしてください!」
耐えかねた一人の女子のキレた声が聴こえた。
「はい、すみません!」
そして目の前にいる
くるくるの瞳で、舌をちろりと見せ
くっそぅ。
なんなんだ、こいつ。
こんなの──反則だ⋯!
タンタンと足音を立てながら自分の席に戻った。
自分の耳に鳴り響く、煩い心臓の音を誤魔化すように──。
くるくる天然ふあふあカノジョ 竹藤戸 茉緒 @fuathksm
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