「白鷺城」の異名もつ巨城、その天守閣に住まう「城の主」。厨(くりや)へと忍び入っては食べ物をかすめ取り、命を繋いでいる野良猫。対照的な両者ゆえにこそ、それが邂逅したときに、物語が幕をあける――ちいさな歴史ファンタジー。
白い優美な威容から、白鷺城とも呼ばれる姫路城。その天守閣には、長壁姫が棲んでいるという伝承があり、様々な逸話があります。そしてまた、小さきものとの逸話がここに。泉鏡花も取り上げていた魅力的な題材なので、また新しい物語としてとりあげていくことってとっても素敵だと思います。伝承と物語をリレーしているみたい。歴史だけじゃなく物語も溢れている場所って、住むのも訪れるのも楽しくなれそう。
恥ずかしながら、長壁姫という存在をこれまでまったく知りませんでした。そういう意味で、とてもまっさらな状態で拝読したのですが……あまりに雰囲気があって震えました。特に第4話のシーンでは、作者様の高い筆力で描かれる彼女の姿が、まるで目の前で再現されているように感じました。何の予備知識も必要ありませんし、全五話で気軽に読み切れる長さということもあって、オススメさせていただきます。近況ノートに記されている「後日譚」にも、ほっこりさせられました。
姫路城の天守閣には「主」が居ると聞きます。その伝承を元にした、短くも優しく、少しだけもの悲しさも感じさせてくれる物語です。歴史にも基づいたストーリーではありますが、専門的な知識は要りません。歌舞伎や演劇では坂東玉三郎も演じたと言われる伝説の姫の物語。ぜひ堪能してください!