人間誰しもこの世に生を受けたあとは少しずつ死に近づいていきます。青年期を終えればゆっくりと、確実に、老いていくのみです。死を免れずとも、せめて死ぬ直前まで若々しくいられたなら! それは多くの人々の望む叶わぬ夢でした。YP(Youth Preservation)という技術が開発されるまでは。
そう、ついに夢は叶ったのです!
人間を構成する三要素、肉体・精神・エイドロン(霊気)のうち、エイドロンを操作するYP術により、寿命の三分の一と引き換えにではありますが、死の直前まで施術時の若さ、身体能力を保つことができるようになったのです。
すごくないですか? 人生観がこれで劇的に変わるでしょう。
この革新的な技術はもちろん多くの人々の関心を集め、熱狂させました。
YPを望む人、望まない人、そこで一儲けしてやろうと企む人。飽くことを知らぬ人間の欲は、さらに若返りや寿命の延長、そして不死までもを望むようになり、YP技術を一元管理している寿命工学協会は無資格エンジニアによる事故や事件を取り締まろうと躍起になります。
果たして人間は奇術の舞台のように、不可能を鮮やかに可能に変え、生死をも自在に操れるようになるのでしょうか。
この物語は、新たな死生観を手にした人々のスリリングな日常を生き生きと描き出した快作です。日常を地味深く描き上げる著者の小気味よい筆遣いに、存分に酔い痴れてください。