ランベール・ギーズ魂の叫び

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★〈デキるクズ〉ランベール・ギーズがアイラ・サウスという少女に夢中になり、少~しだけ改心していきます。大体そんな話です。

★彼はこのストーリーのキーパーソンなので、お手数ですがしばらくお付き合いくださいm(_ _)m

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 ある日僕の前に、エンジェルが舞い降りた。


 ――アイラ・サウス男爵令嬢――


 貴族の令嬢にもかかわらず薄汚れてやせ細り、疲れ切っていた。それに、虹彩が薄く虚ろな目。何も、誰も見ていない瞳。まるで人生をあきらめたような……。

 視力が弱いのだろうか――見えてはいるようだが。袖からのぞいた細腕には痛々しい傷が残っていた。

 全身で僕に訴えてくる、『助けて!』と。


 加えて、幼児のように舌っ足らずな話し方……小説を書いたのだ、知能が低い訳ではなさそうだ。普段誰とも話さないんだろうか?


『あ……あの、これ……読ん~ください……!』


 そして彼女は倒れた。


(あぁ、虐げられた少女は、傷つき、押し潰され、立ち上がれなくなっている)


 芸術評論家を称する僕の審美眼に狂いはない。この少女はやがては光り輝く原石なのだ。最近目ぼしいスキャンダルに乏しく週刊誌の発行部数が減り、奥様とも上手くいかない鬱々としていた僕の心は、いつになくときめいた。


 彼女をこのままにしてはならない。あの虚ろな瞳を僕だけに向けさせ、輝かせたい。願いを込めて書いたであろうシンデレラ・ストーリーは、彼女自身を映しているかのようだった。


 アイラ嬢を屋敷まで送り届けて分かったことがある。彼女は現在、大変厳しい状況に置かれているようなのだ。


 なぜ裏口から屋敷に入らねばならないのか?

 なぜあのように痩せ、肌や髪が荒れているのか? なぜ上手く言葉を発せられないのか?


(僕の手によって逆境から救い出さなければならない――あまたの障壁があるとしても――)


 早急にサウス男爵家を調査する必要がある。





「ウォルティー、新しい調査案件です!」


 彼女をサウス邸の裏口で降ろしたのち、僕――ランベール・ギーズは、丸坊主・丸眼鏡の用心棒に指示を出した。


「予想はつくけれど、一応聞きます。何でしょうか、ギーズ卿」

「この屋敷とアイラ嬢について調べてください」

「……かしこまりました(また女じゃねーか)」

「何ですか、その目は。これはあくまでも仕事です。セントレに言いつけないでくださいね」

「心得てますよ」

 不満そうな顔つきだがいつものことだ、無視だ、無視。


 ギーズ出版社に戻り、書籍編集者のフリップ・セシルをアイラ嬢の担当に指名した。超が付くナルシストだが、リライトの才能は評価できる。大学での成績はかなりよかったらしい。それにこの男は、死ぬまでこき使っても文句を言えない立場なのだ。


 文学青年は薄命ということになっているしね。


(結核にかかって死ね、不倫野郎!)


「フリップ、この短編小説を来月初めから二週間、『セカオピ』の連載小説枠に載せて。それから、これがアイラ嬢への報酬ね」

「ええっ、一応読んでみたんですけど、令嬢奇譚小説ですか? 『セカオピ』の読者層が好みますか? 予定では弁護士ミステリーだったはずです。それに、パーティー会場で王子がいきなり婚約破棄なんて、どこの世界のおとぎ話でしょう。文法も会話文もスペルも、全てが奇妙でちぐはぐですし……」


 コイツは文句が多いのだ。面倒だな。


「予定変更。弁護士ミステリーの開始が二週間ずれるだけだしね。小説はすらすら読めて面白ければそれでいいんです、心に残る必要なんてありませんから。文学的表現はどうでもいいから、文章はフリップがそれらしく直して。大学では文学史専攻だったんでしょ」

「はぁ、そうですけど……お言葉ですが、原稿料が多くありませんか?」

「期待料上乗せで」

「……かしこまりました(左上がり変態文字。しかも全リライトかよ~)」

「校了前に、一度読ませてください」

「構いませんけれど、赤は入れないで下さいね」

「フリップ、君はケチですねぇ」





 などと言っている場合ではなかったのだ。

 ある日を境に彼女は出版社を訪れなくなった。


 これはどうしたことなのか?


 僕は『自称パトロン』でしかない。後見人としての正式な手続きはしていないのだ。今の状態は、若い娘を経済的に支援しているだけ。見方によっては囲っていると言えるのかもしれない。

 早急に彼女のための居場所を整える必要がある。なに、サウス家など取るに足らない家だ、たぶん。あの家から独立させることなど簡単だろう。


 一番の問題は、このことを奥様にどう伝えるかだが……。


「ふぅ……」


 アイラ・サウス嬢……。

 僕たちは出会うのが遅すぎた。

 しかしエレンと出会ったころの君は、まだ子供だった。僕はしがない亡命貴族でしかなく……奥様の実家セントレ家の経済力がなければここまでのし上がることはできなかったし、あなたに会うこともできなかっただろう。

 僕たちが結ばれることは永遠にない。しかし、僕たちを引き裂くことは何人たりともできない。


 ――これは、

『純粋な愛の物語』

 と言っても過言ではないだろう。



~次回もランベール・ギーズのターン~



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☞いきなり痛いオジサマになってしまって申し訳ありませんm(_ _)m。ランベール・ギーズはアモール国出身です。

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