願いを叶える代わりに、あなたの「不要になった一音」をいただきます。
都会の片隅にあるカフェを訪れた者たちは、鐘ヶ淵斎(かねがふち さい)という男と契約を交わす。
差し出すのは金でも命でもない。
自分ではもう要らないと思っている、たったひとつの「音」。
でも……自分にとって要らない音って……一体なんでしょうか?
どこか妖しく、どこか品があり、それでいて容赦がない。
カフェ、契約、十二律――散りばめられたモチーフも洒落ていて、都市伝説を覗き込んでいるような読後感。
さて、「不要な音」とは、いったい何なのか。
次に差し出される一音まで、もう聞き逃せません。
そして作者のアタヲカオ先生は、YouTubeでも『音蝕 -ONSHOKU-』の世界を映像として展開されています。
https://www.youtube.com/watch?v=-ocSME-Kt8w
これがまた、驚くほどのクオリティ。
文字で読んでいた『音蝕』の空気が、音と映像を得て、また違う表情を見せてくれます。
実は私、作品だけでなく先生の動画のファンでもあります。
小説を読んだあとに観るのもよし。
映像からこの世界へ足を踏み入れるのもよし。
ぜひ、耳でも目でも『音蝕』の世界を楽しんでみてください。
都会の片隅にあるカフェ・リフレインでは、願いを叶える代わりに「不要になった一音」を差し出すという奇妙な契約が行われている。
店主の斎は嘘をつかず、できないことをできるとは言わない。ただし、差し出した音がどれほど大切だったかまでは教えてくれない。
売れないミュージシャン響也は、世に出せなかった楽曲をメジャーにするため“一音”を手放し、恋に悩む女子高生陽毬は、聞こえてしまう“隠された音”に導かれて店を訪れる。
雅楽の十二律を軸にした世界観は静かで美しく、同時に不穏さを孕む。
願いと代価のバランスが崩れたとき、捨てたはずの音がどんな形で返ってくるのか――
その緊張感が物語を引き締める。
音にまつわる感情と怪異が丁寧に絡み合う、現代ファンタジーの佳作。