江戸の「麺類皇族」の興亡という大法螺から始まり、舞台は現代の香川へ。讃岐弁でうどんをすすり続ける所長・麺場護と、オカルト好きの助手こむぎの掛け合いが軽快で、ページが止まりません。
感心したのは、ふざけた設定の土台が意外なほど本物だということ。五色台と陰陽五行、根香寺の牛鬼、そして白峰の地に眠る皇子――讃岐の土地の伝承を、麺の論理で大胆に読み替えています。軽トラで札所や名店を巡るたびに、怪異譚と香川ガイドが同時に進む構成も楽しい。
ギャグの合間に護がふと見せる浮かない顔が、物語の奥に何か重いものを予感させます。読後、無性に釜揚げが食べたくなる一作です。