【悲報】学園のマドンナ、陰オタの僕のグッズであんなことやこんなことを!?
@nikuudon_jams
第1話 放課後の教室
うちのクラスには『学園のマドンナ』がいる。
「おい見ろよ、白鳥さんだ……」
「今日もマジで天使だな……」
「あんな美少女、同じ空気を吸わせてもらってるだけで感謝だわ」
白鳥咲夜。
腰まで伸びた綺麗な黒髪に、モデル顔負けのスタイル。テストは常に学年トップで、誰にでも気さくに接する完璧な美少女だ。
「咲夜、今日の放課後ってHR運営委員の打ち合わせだっけ?」
「あ、うん! 神宮寺くん、資料まとめておいてくれたんだよね? ありがとう!」
そこへ爽やかな笑顔で近づいてきたのは、バスケ部エースの神宮寺蓮(じんぐうじれん)だった。高身長で運動神経抜群、おまけにイケメン。
二人並んで仲良く談笑する姿は、まるで一枚の絵画のように完成されており、クラスの誰もが羨望の眼差しを向ける別世界の住人だった。
そして俺はといえば——ただのアニメオタク。現在、高校2年生の春。世間的に見れば青春真っ只中でマドンナと同じクラスと言われれば羨まれるかもしれない。
しかし、周囲からは「キモいオタク」と陰で蔑まれ、浮いている存在。当然、彼女たちとは住む世界が違いすぎるし、会話したことすらない。
噂では、そんな神宮寺と白鳥は付き合っているらしい。
『完璧なマドンナと学園一のイケメン』。
実に絵に描いたようなラブコメの構図だし、俺のような陰キャには一生関係のない話だ。
——はずだった。
◇
「あっ、やべ……」
放課後、最寄り駅の近くまで歩いてから、俺は大切なアニメの限定クリアファイル(明日提出の宿題が入っている)を教室に忘れてきたことに気づいた。
引き返して、夕休みの静まり返った校舎を歩く。
時刻は午後五時過ぎ。部活の掛け声が遠くから聞こえる程度で、2年B組の教室前まで来ると人影は全くなかった。
(さっさと取って帰るか……)
ガラッと引き戸を開けようとした、その時。
「——っ好き! 好き好き大好き……ッ!」
教室の中から、押し殺したような、でも切実で甘い声が聞こえてきた。
(えっ……誰か残ってんのか?)
気まずくなって扉の隙間からそっと中を覗き込む。
夕日が差し込む教室の奥。教卓の影で、一人の女子生徒が背中を丸めて悶絶していた。
白鳥咲夜だ。
彼女は周囲を警戒するようにキョロキョロと見回すと(扉の陰に隠れた俺には気づいていない)、左手で何かの置物を右手でスカートの中に手を入れていた。
「はぁ……今日もカッコよかったなぁ……。目があった気がしたけど、気味悪がられてないかな……」
普段の凛とした声とは全く違う、デレデレに甘えた声。
というか、彼女が手に握りしめているのは——
(いや、白鳥さん教室で何してんの!!??……ん? 左手に持ってるのはアクリルスタンド……? )
夕日に照らされたその透明な板と紙に印刷されているのは、どこかで見たことのある顔だった。
寝癖のついた黒髪。冴えない目元。ダサい制服の着こなし。
(……え? 俺???)
間違いなく、俺(陰オタ)の顔写真を使った自作のアクリルスタンドだった。
公式グッズなんて存在するはずもない俺の姿が、なぜか超高品質なアクリルグッズとして立体化され、学園のマドンナの手の中で可愛がられおかずにされている。
「うぅ……尊い……生きててくれてありがとう……。はあ,,,,,はあ,,,,,あん//」
白鳥咲夜は、俺のアクスタを愛おしそうに頬にすりすりと寄せると、そのまま幸せそうに身悶えした。
(……は????)
俺は思考が完全に停止した。
学園のマドンナが?
イケメンと付き合っていると噂の美少女が?
嫌われオタクの俺のアクスタを自作して「好き好き大好き」と叫びながら自分を慰めている???
——ギシッ。
動揺のあまり、俺の足が廊下の床板を大きく鳴らしてしまう。
「——っ!??!?」
教卓の陰で、白鳥咲夜の体が跳ね上がった。
瞬時にアクスタをカバンへねじ込み、先ほどまで聖域の中に入っていた右手はペンを持ち、ロボットのようなギコチナイ動きでこちらを振り返る。
「だ、誰……っ!?」
夕日の中で顔を真っ赤に染め上げた白鳥咲夜と、ドアの隙間から覗いていた俺の視線が、バッチリと交差した。
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