ある男が死んだあと、残された五人の証言を軸に物語が進みます。読み進めるうちに気になってくるのは、その男がどんな人だったかだけではありません。語る側の人たちが、その輪の中で自分をどこに置いてきたのかも、証言を重ねるたびに少しずつ見えてきます。何気ない一言や、口にされなかったことが、別の人の言葉を通ることで違う意味を帯びていく。その変化がとても印象に残りました。誰が真ん中にいて、誰がその外側にいたのか。登場人物たちの距離や沈黙について、読み終えたあとに考え直したくなる作品です。