RPG世界に来た俺は孤独だ…
ごま
RPG世界に来た俺は孤独だ…
気が付くと、俺は街の真ん中で突っ立っていた。夢から覚めたかのように周囲を見渡すとヨーロッパのような街並みが目の前に広がっていた。
俺は周辺を見渡し、深呼吸をした後に心の中で「異世界転生!?キタコレ!」と叫んだ。俺の目は希望に満ちあふれ、何故か自信が出てきた俺は近くの果物屋の店員に話しかけた。
「やぁ!ここはどこですかね?」
「おいしい果物はいかが?」
店員はそばにあったリンゴを持ち上げ、ニコニコの状態で返事を返したが、話が合わない。
「いや、あの…ここはどこですか?」
店員は持ち上げたリンゴをまたそばに置いた
「おいしい果物はいかが?」
また、そばに置いたリンゴを持ち上げ同じことをしゃべった。俺は違和感を覚えた為、確認として5回ほどやったが結果は同じ。何かに気付いたように後ろを急いで振り向き、再度周囲を見渡すと確かに人は歩いている。だが、同じ人が同じルートをぐるぐると回っていた。
「な、なんだよこれ!」
まるでゲームのような世界、人物は全員同じ言葉しか喋らない…
もしこれが、ゲーム…特にRPGの類のものであるならば王城に行けばなにか掴めるはず!そう思い俺は走った。
そうして、白い石壁に赤の三角屋根が取り付けられているいかにもゲーム風な王城に入っていった。入る際も城の兵士などには一切止められなかった
王城に入ると空間がネジ曲がっているかのように先程の王城の大きさとは違い学校のグラウンドほどの大きさの王の間があった。
中央には赤いカーペット、そして左右には騎士…一段高い場所に豪華な玉座。そして金色に輝く王冠をつけた王が堂々と腰掛けていた。
その左右には王女と思わしき女性と王子と思わしき中学2年生程の男子が立っていた。
普通不審な人物が王城に入ってきたら、騎士は止めるはず…なのに何もされない。
そう思いながらも俺はずかずかと赤いカーペットの上を踏み込んでいき、礼儀作法など無視して王様の目の前に立った。
俺は話しかけようと口を開くと、王様はニコニコしながら喋り始めた。
「おぉ!勇者様が現れたか!頼む!我が王国を救ってくれ。今我が王国は魔王と戦っておるが負けそうなのだ!」
「初期資金として1万ゴールドと鉄の剣、鉄の鎧はワシの左手側にいる王子に渡してもらってくれ」
「魔王との健闘を祈る!」
俺が喋るまもなくペラペラと王様は喋る。再度話しかけてもやはり、同じことしか言わない。俺は王子に話しかける前に今までの違和感…そうここの人物はNPCではないか?という不安を晴らすために王子の顔を殴った。
だが、俺の期待とは異なり王子の顔は鉄かのように固くびくともしなかった。その後、俺が話しかけると
「勇者様!魔王を倒してください!」
「初期資金の1万ゴールドと鉄の剣と鉄の鎧を受け取ってください!」
と、また俺が話す隙を与えないかのように話していたのだが、受け取ったらしいゴールドなどがない。
俺はどこにあるのか?と、ポケットの中を覗くと世界が一時停止され俺の身体も動かなくなった。
そして目の前に黒い画面と白い文字のメニューが現れた。
名前:後藤直樹
所持金:10,000G
スキル:
装備:
鉄の剣 未装備
鉄の鎧 未装備
鉄の剣と鎧を装備したが、手元には何もなく服も変わっていない。
今までの事を考えると………
あぁ…間違いねぇここはRPGの世界だ。
俺はその後、王城を出てこの街から出た。外にいるとやはりスライムやゴブリンなど低レベルのモンスターがおり、一発俺が攻撃を与えると相手も俺に一撃を入れる。というターン制の戦闘も再現されていた。
正直言って、この時は楽しかった。レベルアップ音のテッテレーンという愉快な音も心地よいからだ
だが、しかし最初の街から出て次の街に移動しても人はいるが、それはどこか機械的で同じことの繰り返し…
「こんにちは!勇者様」
「あぁ、こんにちは」
「こんにちは!勇者様」
まだ、普通の人がいるのかもと思い時々返事を返しているが…進歩はなし…
気づけば、この世界でもう1日が終わっていた。
そうして、何週間かが過ぎ去っていった。一日のうちに喋ることと言えば攻撃するときの踏ん張る声以外ない。街にいる人々も正直言って"人"ではなくNPCと呼びたい。というか、呼んだほうが俺の精神が保たれるような気がする。
俺が初めてモンスターに負けてRPGのように目の前が真っ暗になり、近くの宿屋で目が覚めても「大丈夫?」と声をかけてくれる人はおらず、「勇者様!魔王討伐頑張ってね!」と、俺を俺ではなく勇者として用意された台詞を喋るNPCしかいない。
最初は人の声だったが、いつからだろうか?録音された音声を流しているようにしか聞こえなくなった。
道中ストーリー上の流れで仲間を手に入れたが、仲間も「勇者様頑張りましょう!」と同じことしか言わない……俺の後ろを一列になってついてくるだけであった。
正直言って仲間は俺の肉壁としか思えない。
俺は旅の流れで崖付近に来た時に崖の端っこに座り、外の海を見ながらこの孤独感からか、泣いていた事があった。
そんな時に後ろの森から見かけない少女が「大丈夫ですか?」と声をかけてきてくれた時もあった。そのときは本当のNPCじゃない人が現れたのか!と笑みを浮かべながら泣き抱きついた。
「あぁ…君は人なのか?こんなNPCは見たことない、人であってくれ…」
「大丈夫ですか?私なら助けになれるかもしれません」
「と、とりあえず人間なのか?」
「私は普通の人間ですが、勇者様の助けになれることをできる限りします!」
本当に人間なんだよな!
「よ、よし…とりあえず俺の隣に座って海でも眺めよう!」
「勇者様はきっとお疲れなんですね。私達の村に案内しますよ!」
ほんの少し、会話に違和感が生じた。
あぁ…嘘だと言ってくれ…NPCか人間かはっきりしてくれよ…ちくしょう
「君は人なのか?」
「勇者様はきっとお疲れなんですね。私達の村に案内しますよ!」
俺は天を見上げ、彼女がNPCだと信じられず…手を握ってみると鉄のように硬かった。
「ちくしょう…」
俺は膝から崩れた。
非情にもただ単に崖に一定時間座り込むと発生するイベントを引き当てただけであり、俺の期待は打ち砕かれた。
もう俺は諸悪の根源である魔王を倒せば、この世界から解放されるか…せめて、同じ事を延々と喋りまくるNPCではない人と会える!と確信しながら進むしかなかった。
確信していたのは、ただ単に少しでもこの事実を疑っていれば孤独感からか精神が壊されそうな気がしたからだ
俺はNPCなどが別のことを言い会話が成立するようになるか、独り言を言い続けるようになった。
「今日は雨が降ってるな」
「勇者様頑張りましょう!」
「今日は果物は新鮮そうだね」
「おいしい果物はいかが?」
「この街は良いね」
「勇者様!こんにちは!」
俺の言葉を無視するように同じことしか言わない。はぁやってることがバカみたいだ
そこから同じ台詞、イベント、祭りなどが何度も何度も繰り返されていった。
俺は聖剣などを手に入れ本格的に魔王城に近づいていった。毎日、毎日魔王を倒すことで、ここから解放されると考えながら装備更新やレベル上げに勤しんだ。
しかもここは腐ってもRPG。いろんな刺激的な事や情報などまだまだ楽しめる要素が沢山ある。少しずつやる気も湧いてきた。
「勇者様を私が守る!皆先に言っといてくれ!」
「………」
「勇者様を私が守る!皆先に言っといてくれ!」
「………」
「勇者様を……」
このように魔王城に近くなるにつれ四天王など敵も強くなっていき、ただのイベントなのだが仲間も少なからず死んでいった。
俺がレベル99になる時にレベルの横に(MAX)という表記が出現した。
その時には既にもうここに来て3年は経過していただろう。遂に魔王城に来たのだ。
魔王城は禍々しいオーラを出していたが中に入ると懐かしき最初の町の王城のように魔王の間しかなかった。
構図も王城と全く同じであった。俺はどんどん奥に行くと魔王が椅子から立ち上がった。
「ガハハハ!よくぞ勇者、ここまで来た!」
「だが、貴様に待っているのは死のみだ!」
そうして、全く映えない魔王とのターン制の戦闘が終わると最後は勇者の最終奥義で全てを終わらせた
そして、倒れた魔王を見ながら俺のイベント上の顔の頬には涙がついていた
「やっと…やっと…これでこの世界から解放される…」
「よくぞ、勇者よ…我を倒した。奥に貴様をさらなる境地へと導く宝箱があるだろう。それを使い我が再度復活するまで、誰にも負けるなよ?」
「さらば!」
そう言い、魔王は倒れた。俺は魔王が言っていた奥の部屋へ進むと一つの机と目玉にコウモリのような翼がついたモンスターがいた。
「ひぃっ!こ、殺すのだけは!」
目玉のモンスターはそんなことを言っていたが、命乞いをしてもどうせNPC。殺さなかった所でこの会話内容は変わらない。
俺は颯爽と目玉のモンスターを殺した後に机のうえに置いてあった宝箱と紙が置いてあった為俺はそれを手に取り読み上げた。
「フッフッフッこれを読んでいるということは我は死んだのだろう。」
「とりあえず、ギエゴを殺したな。まぁいいさ、あれはお前を試すだけだからな。
宝箱に入っている防御を無視できるデビートでも持っていけ。」
「By魔王」
うん…?待てよ、NPCじゃない普通の人間や元いた世界に帰還できる話は?あれ…あれ…あれ…なんで…?
違う。違う。違う。
こんなはずじゃないだろう?魔王を倒せば全てが終わるはずだろ?そう信じて俺は3年間生きてきたのに…?
心臓が早鐘を打つ。とりあえず、デビートを受け取り脱出した。
帰り道の街で様々な所に「何か変わっていてくれ!」という希望を持ちながら寄っていった。
「勇者様!魔王を倒したのですね!神のご信託が叶ったのですね!」
「………」
「勇者様!魔王を倒したのですね!神のご信託が叶ったのですね!」
教会も駄目か…
「勇者様はすげぇな!俺の剣も聖剣と同じぐらいの強さになれるように頑張るぜ!」
「………」
「勇者様はすげぇな!俺の剣も聖剣と同じぐらいの強さになれるように頑張るぜ!」
鍛冶屋も駄目か…
「勇者様が魔王を討伐するという未来はこの水晶玉からお見通しだったのです」
占い屋もだめか…
本屋もだめ、洞窟に住んでいた少年もだめ、騎士団もだめ、トイレに住んでいるホームレスもだめ、冒険者ギルドもだめ、森の守護者もだめ、だめ、だめ、だめ、だめ。
そして様々な所を回っていると…最初の町に辿り着いてしまった。
早速王が「勇者様が帰ったぞ!」と言っていた。恐らくイベントが始まったのだろう…最後までやったら、解放されるのかな…
俺は王城へ王様に連れられて向かった。王城の中央のカーペットの左右には民衆や貴族が拍手していた。
そして俺は王様に
「ここにて、世界最高の英雄の英雄譚を終了する!」
と言われ救世主と書かれたバッジを貰い胸に付けると、自然と目が閉じた。目の裏にはエンドロールらしきものが流れる。
「あぁ…ようやく解放されるのか」
俺が安堵していると、目が開けられるようになり、目を開けると目の前に王様が座り拍手していた。
「お、おい…嘘…だろ?俺が地球に帰れるっていう話はどうなったんだよ?」
「勇者様は魔王を討伐してくれた世界の救世主じゃ!」
「おい、嘘だと言ってくれ」
俺は王様の肩をガシッと掴む。周囲の民衆や貴族は俺の方を笑顔で見てくる。
「勇者様は素晴らしい!」
「流石!勇者様!」
「素敵!勇者様!」
「俺達の救世主だ!」
「勇者様!」
「勇者様!」
「勇者様!」
俺の中で何かが千切れ崩れる音がした。
「うるせぇんだよ」
魔王から授けられた防御を無視するデビートを使い王を切った。
その時王は体が斜めに真っ二つになり、ゴトッと倒れた。血しぶきは一切ない、想定されていないのだろう
民衆は王が死んだというのに拍手を永遠としている。
俺は首の力が抜け地面をみながら、剣を強く握った
「あぁ…コイツラの顔なんか見たくない…」
俺は周囲の民衆を剣一振りで上半身と下半身を真っ二つにした。ゴトッゴトッと重いものが棚から落ちるような音が鳴り響く。
その時、最初の街からはNPCがいなくなった。
様々な街を回りNPCを切りまくった。おもちゃを壊す子供のように…
そして、いつしかNPCはいなくなっていた。再度生まれる魔物しかいない世界…静かな夜、静かな街。会話だけではなく台詞を言ってくれるNPCすらいなくなった。
静寂が俺を包んだ。今やあんなに嫌だったNPCの音声すらも聞こえない。
そして、ここは魔王討伐後の設定上では平和な世界…つまりRPGの終わり、何のイベントもなく変化も何もない。
ここで新しい人が来てもNPCを皆殺しにしたことがわかると俺のことを拒絶するだろう。
「………」
風がなびく音だけが聞こえる。
誰かと…くだらない話でもしたかった。
俺が死んだあと、そのまま死ぬのか
宿屋でまた目を覚ますのか
もしかすると、最初の頃に戻っているかもしれない…
それでも……
俺は手をガタガタと震わせながらデビートを手に取った。
Game Over
Continue?
▶Yes
Yes
RPG世界に来た俺は孤独だ… ごま @koyo_123
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