木々の間から蝉の鳴き声が聞こえて来る。
揚羽蝶に翔陵飛蝗、兜に鍬形…小金虫、蟻。
炎天下の雑木林や草叢は、小さな虫たちの
短い 生 が、其処彼処に煌めいている。
虫たちが、好きだった。
夏の盛りを一生懸命に生きる小さな姿は
何とも好ましいものだったのだ。
一頭の、揚羽蝶を捕まえた帰り道。
公園で寝袋に身を縮めるホームレスを見た。
もぞもぞとした蠕動が、少年達の嗜虐心を
刺激したのだろう。礫を投げられていた。
芋虫の様に、只々為す術もなく痛め付けられ
見ていられず逃げ帰ったのだが。
数々の妖艶な怪異譚を世に送る作者は、
実は昆虫にも造詣が深い。
それは、然もない小さなモノを決して
蔑ろにせずに確と見つめる 眼差し を
持つ事に等しいのだろう。
但し、これは 怪異 譚だ。
良心の呵責に苛まれつつ、早朝の公園で
彼が見たもの。
それは、間違いなく 怪異 であり又
其処には多分、何ら因果関係はないのだ。
何故ならば。
怪異 とは、そういうモノだから。