「夏」と聞くと景色を思い浮かべますが、この作品は最初に耳が夏を見つけます。名前を言わないのに「ああ、あの季節だ」と気付かされる感覚が、とても面白かったです。特に私が好きだったのは、雨上がりの焦げたような匂いと、蒸された緑の香りが重なる場面。ただの情景描写ではなく、自分の記憶まで呼び起こされるようでした。
そして最後の「大好きで大嫌いな夏」という一文が、それまで積み重ねられた音や匂いを一気に感情へ変えてしまうのが見事です。読むだけなのに、自分まで木陰を探しながら歩いている気分になりました。何気ない季節を、こんなにも新鮮に感じさせてくれる作品です。ぜひご自身の「夏の音」を思い浮かべながら味わってみてください。
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