洋楽から着想を得た短歌という試みがまず面白く、それぞれの曲を三十一音へどう移し替えるのかを楽しみながら読みました。
その一方で、個人的に特に印象に残ったのは、最後のヘアクリームの香りからお母様の記憶へつながる首です。
「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」という古歌があります。
もちろん橘とヘアクリームではずいぶん趣が違いますが(笑)、香りを媒介にして、現在から不意に過去へ連れていかれる仕組みそのものはよく似ています。
前半では洋楽という現代的な素材を大胆に短歌へ取り込みながら、後半では、意図したものかどうかは別として、古歌にも通じるような「香りと記憶」の技法が顔を出す。
新しいものを取り込むことと、昔から短歌が得意としてきた感覚とが、一つの作品の中で自然に同居しているところが面白かったです。
洋楽を入り口に読み始めたのに、最後にはずいぶん古いところまで連れていかれました。