「なっちゃん」という存在はまだ何者なのか分からない。
それなのに主人公と一緒になって探したくなるのは、夏の空気や家族との何気ない会話、図鑑や押し花といった"思い出の手触り"がとても丁寧に描かれているからだと思いました。
特にスターチスの押し花を見つける場面は印象的でした。
ただの押し花なのに、一気に記憶の扉が少しだけ開いたような感覚になって、鳥肌が立ちました。
派手な事件は起きないのに、読むたびに少しずつ謎が深まっていく。そして「忘れること」と「失うこと」の違いを静かに問いかけてくる。
読んでいると、自分にも忘れてしまった大切な誰かがいたんじゃないか、そんな気持ちにさせられます。
夏休みの始まりにぴったりな、どこか懐かしくて切ない青春ミステリー。
最後になっちゃんと再会した時、自分まで泣いてしまいそうな予感がしています。