タイトルに惹かれて来たのですが。
カクヨムシェアワールドに応募されている作品で、具体的な名が登場しない作品は初めて見ました。
けれども、それがとにかく味を出しています。
文体はとても純文学的で、文字選びから情景描写の仕方までとにかく綺麗。こういうのを叙情的というのでしょうか。
前半はずっと静かな波の音だけがしました。対して視覚は白や青、赤と色鮮やかで、湿気や果実の感触は鮮明……。むしろ、音が静かゆえに読み手は他の感覚を一層はっきり体験させられるのかもしれません。
ですが場面が転換すると、途端に音が大きくなる。物語の人物(人なのかも定かでないですが)と一緒になって、とつぜん押し寄せてきた大波にさらわれたような感覚がします。
最後までとにかく、美しい物語です。
悔やむとすれば、レビュー者であるぼくがカクヨムシェアワールドの設定集の内容が覚えられず、どの人物を用いているのか分からなかったたこと。設定をよく知る人なら、「あの人物かな?」と想像できてもっと面白いかもしれません。
純文学が好きな方には刺さるはず。お勧めです。