物語の主人公はアルテンシュタインという架空の大都市だと言って良い。
この都市に住まう人々の物語が、登場人物の持つ雰囲気に合わせて、時に軽やかに、時に秘めやかに、時に重厚に描き出されている。
どれも、基本的にはミステリーの趣きがあるように思われる。登場人物の行動は簡単には説明されず、何故その行動を取るのか考えさせられながら読み進めることになる。
私が思わず膝を打ったのは「虚飾の接吻」。作中随一の性愛の示唆の強い作品(BL)ではあるが、本質はそこではない。元貴族の子息にして美貌のエリアスの仕掛ける、自分を陥れた継母と異母弟に対する復讐転覆劇。
読者は、彼の身体を張った罠に、ゾクリと背筋を震わすことになる。
そして、好みは「晩夏」のシュテファンくん!
まさに珠玉の短編集。大変面白かったです✨
物語の舞台は架空である。
それは誰もが知る事実。
作者の頭の中で生まれ、キャラクターが歩き、生きることで輪郭を無し立ち上がる背景。
その舞台が作り込まれれば作り込まれるほど、虚実の境は曖昧になる。
その境を極限までぼかし、あたかもそこに「在る」ように見せるのが
作者様の手腕であり物語の魅力であると感じました。
アルテンシャインという都は、モデルはあれど架空の街である。
とはいえ、インフラも名物も人々の暮らしも階級も政治もすべて、
具に編まれて作者さまの頭の中に「存在」しているのだから舌を巻く。
そして紡がれるは四つの季節と四つの恋。
恋情や性愛という言葉からは始まらない。
それは確かに人生の真ん中に据えるような「絆」であり「縁(よすが)」である。
恋とは魂が求めること
愛とは魂が呼び合うこと
そんな言葉が浮かぶような、焦げついて燃え上がり、焼き付いて消えないような物語です。
旅支度は整いましたか?
あなたの心に確かに現れる都が、ここに在ります。