第3話​ ◇【響 視点】

廊下で出くわした笹井くんに……


​「えっと……」と言ったまま、オレの方が黙り込んだ。


​「なに?」


​(やっぱり。超不機嫌ってやつね……)


​普段は笹井くん呼びだけど……


​いつか……

​下の名前で呼んでみたいなぁ……


​透って呼び方、カッコ良くない?


​普通に顔も大人びてカッコ良いし!

​身長もスラッとして高くて、同じクラス委員の仲間が透のこと聞いてくる程なんだよね。


​“ねぇ〜笹井くんってどういう人?”


​いや。こっちが聞きたいよ。


​“同室なんでしょ? ナニか話したりする?”


​残念でした。

​まだ、ちゃんと話した事がないんですよぉ〜〜だ。


​と、まぁ……こんなふうに聞かれることが多いんだ。


​率直な感想、イケメンとはまた違った魅力をもった高身長で、仕草も大人びている分普通に目立つ。


​そんなの十分知ってるオレとしては、追い打ちされてるみたいでいい気がしない。


​オレの方が誰よりも近くに居るけど……


​透の事は、知っていても誰にも教えるつもりはない。


​思うに。

​おそらくオレが勝手に周りを、敵意まじりで嫉妬丸出しにして対抗していることは自覚している。


​多分。


​寮で初めて会った時から。

​オレ、好きになったんだよなぁ……


​透が……


​うん、絶対に。


​この好きは、友達とか同室だからっていう仲間意識じゃない。


​ここ最近、かなり考え抜いて出した答えなんだ。


​迷ったよ、それなりに。


​だって……


透は男だし、オレも男だし。

​今まで恋愛対象は女の子だったんだよ。


小さくてフワフワして柔らかそうで、可愛らしくて、髪も長い。


​こんなゴツイ男は論外だった。


​それなのにナゼか、どうしようもなく気になってしまって仕方がない。


​こんな気持ちを、透にぶつけたりしたら。


​引かれないかなぁ……


​いや……透のことだから……


​確実に引くよね。

迷惑になるよね。


​でも、普通に話せるようにはなりたいとは思っている。


​そんな風に考え事をしながら二段ベッドの下でオレが寝返りを打った時、上の段で寝ているはずの透が、何度も寝返りを打っていることに気が付いた。


​考えてみれば、透はよく寝返りを打っている。


​そういう時は決まって、気配も寝ている感じがしない。


​呼吸音も、寝入っているにしては不自然だ。


​透は寝付きがよくないのかなぁ……

​で、今日は特に寝付きがよくないらしい。


​そんな程度に考えていたけど、一度でも気になり出すと、オレの方も気になって寝付けなくなった。


​ただオレの場合は明け方前には寝付いたしく、朝になってスマホのアラームで普段通りに起こされた。


​同時に二段ベッドの上もビクッと動いたように思えたから、少しは眠れたと思う。


​でも実際、起きてきた透の顔を見たら不快指数が高過ぎて……


​「……おはよう……」と声を掛けるだけで精一杯だった。


​「おぉ……」


​顔色もそうだけど、機嫌も悪そうな声で、オレの心配は確信になっていった。


​“これは、一睡も出来なかったパターンかな?”…と、


​返事を返してくれたのは嬉しいけど……


​大丈夫じゃないでしょ? が、オレの気持ちの大半を占めてた。


​「あの……笹井くん?」

「なに?……」

「あっ……えっと、何でもないです……」


​「あっそ……」


​あまりにも素っ気なさすぎて、「急に声掛けて、ごめん」とか矛盾したように答えながら、身支度して一人食堂に向かう透を見送った。


​それが、あっての昼休み。

立ち往生気味の透に話しかけたんだ。


​「昨日……もしかして、寝れてないんじゃない?」


​バツが悪そうな顔して……

​話しかけんなよ、みたいな視線を返された。


​「何で?」


​って、そりゃ……


​「下で寝てるし。雰囲気? で分かるよ……」


​フラつく透の腕を、思わず掴む。

​あからさまにイヤそうな表情。


​「倒れられたくないからね。そうだ。ここから少し歩くけど……静かで誰も来なさそうな所に案内してあげるよ……」


​オレは、透に向かってニヤリと笑う。

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