赤い血を羨望する、赤ずくめの魔女の前に現れたのは鮮烈なる赤を流した少女。
少女の血を欲した青き血潮の魔女と、“まじょのおきゃくさま”となった少女の共同生活は始まる。
完全に少女のことを利用する目的の魔女と、森で迷子になっていた少女が紡ぐのは、少し歪な師弟関係。
魔女は少女に魔法や薬の知識を。
少女は魔女に社会性や気力を。
それぞれ与え合いながらも、二人の関係性を繋ぎ留めるのは、魔女が少女の血を欲しているという狂気的な衝動である。少女には秘匿された魔女の本心は、彼女たちの仲が期限付きであることの残酷さを象る。
完全に魔女側が主導権を握っている状況で、健気に弟子として魔女のことを慕う少女の愛らしさ。隠した野望はあれど、師匠として完璧に振る舞ってきた魔女の様子。
狂気と親愛が交差する。そんな二人のやりとりが魅力的であり、紛れもない師弟関係の良さを摂取することができる。
青い血と赤い血と。
双方が何を欲していて、互いに何を望んでいるのか。
その絶妙なズレやバランスを映えさせるのは色の描写である。赤と青の混ざり合いは物語のラストを向かえるにあたり重要なモチーフとして機能する。
設定の妙がキャラクターの心情に大きく付与されたとき、降りかかってくる結末は必見。
とても色彩の美しいお話だと思いました。
色が多くあるのではありません。情景には森や水の色もあるのでしょうが、際立って鮮烈に目を引くのはたった三色。
赤、青、そして白。
時には血の色として、時には薔薇の色として、この三色が際立ち、読み手の目を引く。そして、惹き付ける。
主要人物はふたりです。
青い血の流れる、赤色好きの魔女ルージュ。
そして魔女ルージュに拾われ、魔女ルージュを慕う、弟子の少女です。
魔女ルージュは、良心から少女を拾ったのではありません。
赤い血を手に入れるためです。
魔女ルージュはたびたび、弟子の血や瞳の赤に注目し、なみなみならぬ赤色への執着を見せます。ですが弟子を取ったことで、少しずつ生活が変わっていく。
ラストの色の変化はとても美しく、切ないです。
弟子の姿は早々に麦わら帽子で隠れていて描写されず、加えて名前も登場しないことを不思議には思っていたのですが、それはラスト、色が一転するための布石だったのだと驚かされました。
お勧めです。
未読の方はぜひ、この「色」が魅せる美しく切ない、魔女と弟子の物語をご一読ください。
赤を愛し、青い血を憎む魔女・ルージュ。
彼女が森で倒れていた少女を拾ったのは、純粋な優しさからではありませんでした。
少女の赤い血を、いつか自分のものにするため。
そんな薄暗い欲から始まる師弟関係が、少しずつ別のものへ変わっていく。その過程が、美しく、不穏に描かれた全三話の短編です。
ルージュにとって、赤は憧れであり、幸福の象徴。
一方で、青は迫害され続けてきた自分自身の証でもあります。
赤いドレス、青い血、白い髪、薔薇、古びた麦わら帽子。
作中に置かれた色や小物の一つひとつが、人物の感情や過去と結びつき、読み進めるほど意味を変えていくところがとても印象的でした。
特に魅力的なのは、ルージュと弟子の関係です。
弟子は師匠を心から慕い、魔法を覚えるたびに嬉しそうに報告する。
ルージュもまた、血を狙って育てているはずなのに、褒め、案じ、見守ることがいつしか当たり前になっていきます。
けれど、その穏やかな暮らしの奥には、最初から決して消えない秘密があります。
欲から始まった関係は、本当に家族になれるのか。
人は、自分を苦しめてきた悪意から、大切な誰かを守れるのか。
赤、青、白。
三つの色が最後にどんな意味を持つのか、ぜひ実際に見届けてほしいです。
三話という短さの中に、迫害、自己嫌悪、憧れ、愛情が濃密に織り込まれた、切なく美しい物語でした。