作者様の感性の豊かさの垣間見える、美しい文芸作品です。
本作は放課後のひとときを過ごす、ふたりの少年たち(文章の中で性別が明示されていないため、女性でも本レビューでは少年と記載します)の不安や焦燥を淡々と綴ったもの。
物語、というにはストーリーはなく、
独白、というにはストーリーを感じる。
語られる言葉は少なく、感情の多くは情景で教えてくれます。繊細で不安定で成長途中の少年たちの心の叫びが、情景を通してひしひしと伝わってくるのです。
おそらく高校生さんなのでしょう。
人によってはもう数年、大学や大学院で人生の夏休みを過ごす方もいらっしゃいますが、高校生さんは成人までのカウントダウンが始まっている年齢です。身体もすっかり成長して、大人と同じような身体つきになっている。
変化には不安が付き物です。
これまでの当たり前が当たり前でなくなる。子供から大人となればその変化は大きく、(例外もありますが)これまでは大人が守ってくれて、たいていのことの責任は問われない。けれども大人になれば責任がともない、誰も守ってくれない。自分のことは自分で責任持って決め、進んでいかなければならない。
本作はきっとそんな帰路に立って、不安に足がすくみそうになっている少年たちです。
作中の言葉を引用しますが、あらゆる境界線が消失した空白の檻、底知れぬ奈落……読んでいるだけで読者まで息苦しく、立ちすくみそう。
お勧めです。未読の方はぜひお手にとって、この美しく、儚く、繊細で今にも壊れてしまいそうな少年たちの心を感じてみてください。