真面目で、責任感があって、ちゃんとしようとする。
だからこそ、知らないうちに自分を追い詰めてしまう。
そんな危うさを抱えた医学生・依音と、ちょっと変わった神様との出会いを描いた物語です。
この物語を読んでいて妙に刺さったのが、依音は決して「弱いから」追い詰められたわけではない、というところ。
むしろ真面目で、我慢ができて、人の気持ちまで考えられてしまう。
だから嫌な相手にも強く出られないし、うまくいかなければ「もっと自分が頑張れば」と考えてしまう。
……これ、現代人にはけっこう他人事じゃない気がします。
そんな依音と向き合う神様が、またいいんです。
ふんわり優しそうなのに、ただ慰めてくれるだけではない。
依音が自分でも見ないようにしていたところを、時には思いきりズバッと突いてくる。
神様らしいのか人間くさいのか、なんとも掴みきれない彼との会話が楽しくて、テーマは決して軽くないのに、不思議と重苦しさを感じません。
そして、このタイトル。
『それはまるでシフォンケーキのような』
……気になりませんか?
なぜシフォンケーキなのか。
この柔らかくて、ちょっと不思議なタイトルの意味がわかったとき、きっと「ああ、なるほど」と頬が緩むはず。
甘すぎない。でも、ちゃんと心に残る。
そんな素敵な一作です。
医師になるという夢を叶え、医学部へ進学した篠原依音。
しかし、待っていたのは華やかな学生生活ではなく、成績への焦りや周囲との温度差、息苦しい人間関係でした。
努力しているのに報われない。
誰かを傷つけたくなくて、自分ばかりが我慢してしまう。
そんな依音の苦しみはとても現実味があり、知らず知らずのうちに自分を追い詰めてしまう姿に胸が痛みます。
そんな彼女が出会うのが、銀髪と黄金の瞳を持つ不思議な青年・シフォンです。
柔らかな雰囲気をまといながらも、ただ優しく慰めるだけではなく、時には核心を突く言葉を投げかける彼とのやり取りが本作の大きな魅力です。
「優しくあること」と「自分を犠牲にすること」は同じではない。
自分を守るために誰かと距離を置いてもいい。
シフォンの言葉は、依音だけでなく、頑張りすぎてしまう読者の心にも静かに届くと思うんです。
読み終えたあとには、シフォンケーキのようにふんわりと優しく、それでいて確かな温かさが心に残ります。
疲れた時や、自分の価値を見失いそうになった時に読んでほしい、そっと前を向く力をくれる素敵な物語です!