前世で守れなかった罪を抱え、貴族家に転生したシオンは、虚弱な体と震える左手を抱えながら「アンチ」という異能を目覚めさせる。不正を暴き、腐った家柄を壊すほど震えは静まるのに、それは救いではなく空白を広げるだけ。裁くほどに自分の境界が曖昧になり、家名を消し去った先に残ったのは虚無と孤独。そんな彼が最後に求めたのは、肩書きでも家柄でもなく、ただ一人に名前を呼ばれること。ざまぁの快感の先に、人が生き直す瞬間を描いた静かな再生譚。
最初は不遇な主人公が力を得る話かと思ったのですが、そこから単純な爽快感では終わらないところが印象に残りました。シオンの左手の震えや過去の記憶がずっと付きまとっていて、読んでいるこちらまでだんだん危うさを感じてきます。この先シオンがどこまで変わってしまうのか、それとも何かを取り戻せるのか、かなり気になります。