これは怖いですね。何気ない忘れ物の問い合わせが、こんな恐怖につながるとは思いませんでした。冒頭から主人公がボールペンを回している描写があり、それが最後に見事につながる展開が巧みです。電話の相手が少しずつ不気味さを増していくところも、読んでいてゾッとしました。最後の小さなレンズに気づいた瞬間、すべての意味が変わる。短い文章の中でしっかり恐怖を味わえる、完成度の高い短編ホラーでした。
スポーツジムにかかってきた一本の電話。「忘れ物のお伺いなのですが」探しているのは、黒いボールペン。しかも失くしたのは、もう半年ほど前だという。閉館間際の面倒な問い合わせ。最初は、それだけだったはずなのに。「髪を切りましたね。今の髪型の方が似合っています。」この一言から、一気に日常が恐怖へ変わります。短い。シンプル。なのに最後まで読んだ瞬間、それまで何気なく描かれていたものの意味が反転する。読後に残る感想は、主人公とまったく同じでした。最悪だ。
何気ない電話対応の描写から始まる日常が、会話が進むにつれて少しずつ歪んでいく感覚がたまりません。淡々とした一人称の語りが逆に不気味さを際立たせ、最後の一文まで気を抜けない緊張感が続きます。じわじわ来るホラーテイストの短編が好きな方、静かな怖さを味わいたい方に強くおすすめします。
苛立ちが不安へ変わってゆく。短いながらも恐怖を真正面からぶつけてくる作品でした。面白かったです。