実家が没落し学費の支払いも厳しい状況に追い込まれていた貴族令嬢のアリシア。それでもたくましく生きていた彼女だが学園の遠征実習中、同級生によってモンスターの群れに追いやられ見捨てられてしまう。絶体絶命の窮地の中で、彼女が偶然見つけたのは未知の人工物。その正体は銀河連邦によって作られた、AI搭載の惑星開発用コンテナだった……!
実の彼女の祖父は、たまたまこの惑星に不時着してしまった銀河連邦の軍人で、このコンテナの本来の持ち主。そして血縁によって彼女はこのSF的な超文明の遺産をそっくり受け継ぐことになったのだ!
しかしテックフォードという名がつけられたこのAI、意外と融通が利かない。モンスター退治を頼めば、「現地生命体の虐殺は、環境保護の観点から禁止されています」と言い出すし、お金儲けの相談をしても「その質問にお答えするためには、文化や市場、それに常識の情報が必要です」というまともすぎる回答が返ってくる。ファンタジー世界のお嬢様とSF世界のAIという全く違う文化に属する二人のこうした掛け合いがとても楽しい。
また、なぜ銀河連邦外のこの星に、現生人類とそっくりな人間が存在するのか、なぜこの星の人間は魔法が使えるのかなど、ただSF兵器をファンタジー世界に持ち込むだけではなく根幹の設定にSF的な考察要素が根付いているのも嬉しい。
というわけで、最強の遺産を手にしたものの、銀河連邦宇宙軍法により縛りプレイを強制させられるアリシアお嬢様がここからどうやって逆転していくのか、是非今後を見守っていきたい。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)