滅びゆく世界と、旅する二人の日常のコントラストが良い雰囲気!
英雄としての宿命や理不尽な滅びを「直視して戦う」のではなく、あえて「無視して今の普通を生きる」というテーマが新鮮ですね。
滅びの危機が迫る世界観でありながら、19世紀ヨーロッパ風のマジックパンクな小道具や、焦げたベーコンをめぐる掛け合い、本屋での出来事など、少女たちの会話のぶつかりあいが温かく、だからこそ「救世主ではなく普通として生きる」という選択の切実さが良きです。
大いなる使命から背を向け、少女として普通に生きることを選ぶアンジェリアの許されざる逃避行。でも、尊厳や当たり前の幸せを守るための抵抗だよね。この先に待つ滅びをどう無視し、自分だけの明日を選び取っていくのか、その旅路の果てに、どんな結末を迎えるのか楽しみですね。
繊細な観察眼で捉えられた、退廃的ながらも人の営みが残る世界。
序章の文体は格調高くも難解さがあるが、決して独りよがりな作者が書いた意味不明な言葉の羅列ではない。確かなもの悲しさと儚さを併せ持っているがゆえに、場面の美しさを引き立てるのに一翼を担っているのがわかる。
しかし第1章。すでにレビューされているように、アンジェとユノの掛け合いは漫画、アニメ的で笑いどころと優しさがあふれている。一見の価値あり。序章で苦手意識を感じた人も 、1話と2話くらいまでは読み進めることをおすすめしたい。
また、架空の世界を舞台にした作品では、作者が語りたい設定は山ほどあるはずだ。その一端は世界の暦や季節の話からうっすらと見て取れるが、押し付けがましい説明が長々と続くわけでもなく、語られる世界は主人公アンジェの目に映るものがほとんどである。
キッチンコンテナ、料理に食事、銃弓、からくり仕掛けの日記帳、そして恐ろしい深淵の怪物。古めかしい浪漫を随所に忍ばせつつも、蒸気や石炭、油に歯車、汚い街並みといったわかりやすいスチームパンク的要素は控えめで、活気あふれるというよりは、タイトルの通り、作品全体の雰囲気は「淑やかな浪漫」であるように思える。
読むだけならばアカウントは不要だと教えられたが、重い腰を上げてでも応援せずにはいられない作品。
「滅びゆく世は無視します!」がマイナージャンルを盛り上げてくれることに期待したいところだ。