文章技術の確かさに、まず唸りました。しっかりといろんな作品を読み、それを自分の血肉にしていることが伝わってくる文体です。「セピア色で二次元めいたお姉さん」というコンセプトが、「セピア色の記憶」という言葉のイメージと見事にマッチしていて、色褪せた質感、コマ送りのような動き、どれもが”忘れられた存在”というテーマと不可分に結びついています。ボーイミーツガールとしての完成度も高く、出会いから別れがたい関係になるまでの3日間、飽きさせずに読ませきる筆力がありました。
読み終えて強く感じたのは、この作者さんは「描きたい場面」を複数、確かな熱量で持っている方だということです。色褪せた女性との出会い、墓場でのセピア色の涙、父の日記に綴られた狂気じみた執着、祠を打ち壊す音。どれも単体で見れば強い場面です。ただ、2万字という文字数制限の中でこれらすべてを活かそうとした結果、場面と場面をつなぐ部分が駆け足になってしまった印象があります。特に、祠を壊しても解決しなかった後、主人公が答えに辿り着く場面は、閃きの中身が一文もないまま次の行動に移ってしまい、読者が推論に同伴できないまま感動の場面に入ってしまうのが、少しもったいなく感じました。
一案として、父の日記パートや二人の食事パートなどをひとつ削り、その分を場面と場面の「つなぎ」の文字数にまわすという方法も考えられます。本当に書きたい主題や場面が何なのか、作品と自分に向き合い直してみる。オッカムの剃刀の例えを出すまでもなく、作品を磨く中では、足す事よりもむしろ、削ることのほうがより大切で重要な工程であることも、よくあります。
今回は文字数制限のある中での創作ということで、産みの苦しみを味わわれたことと思いました。それでもご自身の持ち味である丁寧な描写をしっかりと残していること、魅力的で謎めいた「お姉さん」を描けていること、父と子の複雑な想いと絆を表現していたことなどなど、惹きつけられる部分のとても多い作品でした。次回作も楽しみにしています。
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