主人公は事実検証にすぐれていると自負し、事ある毎に自らの検証作業を「プロの仕事」と自賛します。
しかし読者が抱く印象は真逆です。論旨は滅裂、何より物証に裏切られています。怨恨が妄想を育んだとしか思えなくなります。
読者には、複数の裏切りが待ち構えています。
主人公の仕事は自賛ではなく客観的にプロの仕事でした。定規と水準器で組み立てた格子の如くに正確でした。歪んでいるのは、世界。
検証作業が正確に直線を引くほど、世界が湾曲していくことが実証されていきます。
どのように歪んでいるのか、評者は明かしません。主人公が残した資料を参照し、ご自身で検証なさるように望みます。