喪失の只中にいる人の心をそのまま書き留めた記録、そのように感じました。ノンフィクションと書かれているのでなおさらです。
「一番に愛してくれる人を失った」痛切な欠落に言葉を失います。どんな言葉も空空しくなってしまう。
父への愛と憎しみが同居する複雑な感情も飾られることなく綴られています。
ノンフィクションだからこそ、評価より先に受け止めたくなる一編です。
一番印象に残ったのは、「函館のホテルで一人待っていたとき、『いつかこの光景も失われてしまう』と感じた」場面。
そこだけ急に情景が立ち上がり、それまで抽象的だった文章に実体が宿ります。
そして最後の「別に、もうなんでもいいんだ。」は、諦めというより、悲しみを抱え続けて疲れ切ってしまった人の声に聞こえました。
作品としての完成度を語るより、「ここまで書かなければ抱えきれなかったのだろう」と感じさせられる文章でした。
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