第6話 最強にもデメリットはある

 ロードコボルトのダンジョンも問題なく攻略することが出来た俺達は久しぶりにステータスがレベルアップした。俺がレベル16、フレドルドが15、ラーシアも15だ。

 久々のレベルアップのお陰か全てのパラメーターが大きく成長している。俺とフレドルドの場合は主に筋力と俊敏性が大きく成長し、ラーシアは魔力量が大きく増えていた。

 サーゴブリンとロードコボルト戦で走り回り、攻撃したことで筋力と俊敏性が上がり、ラーシアは魔法をより酷使したお陰で魔力量が増えた様だ。しかし、今までランクアップでは例を見ない程に今回のレベルアップはステータスの伸びが良い。

 それに今まではA級ダンジョンを幾つかクリアしてレベルアップと言う状況だったが今までの貯金があったにしてもC級のダンジョンを二つクリアしたことでレベルが上がったと言うのはやや不自然だ。


「これは、もしかしてグレイの付与魔法のデメリットか?」

「冷静に考えればそうなりそうだね」

「流石に強く成れてデメリットがない方がおかしいか」


 全員がステータスを見ながら今まで以上の伸びとレベルアップの速さに恐らくグレイの付与魔法にデメリットがあったと気付く。と同時にあの異常と言ってもよいグレイの魔法がなんのデメリットもないわけがないと納得した。

 恐らくは経験値とレベルアップの時に貰えるパラメーターの減少が起きるのだろう。確かに言われて見れば納得できる理論だ。

 本来の力以上の実力を発揮した上でクリアした経験に意味が薄く、強力なバフによって補助を受けた行動はその身体の酷使具合が変わるのだからそのパラメーターが伸びにくくなるのは当然である。俺達は常にあのグレイの補助を受けていた分同じレベル帯の冒険者に比べると恐らくステータスが低い状態にある様だ。それは推奨されているレベルのダンジョンを考えると恐らく間違いない。ロードコボルトもサーゴブリンも推奨レベルは一桁台のダンジョンだが、スワンゲインは推奨レベルで言えば13から15と言われている。だと言うのにそのレベルになっている俺達が体感として間違いなく今のままではスワンゲインを倒すことは出来ないと確信してしまっていた。

 つまり、ギルドが想定するレベルよりも成長出来ていないと言う事実がはっきりと出てしまっているのだ。


「これは至急伝えないとだな」

「そうだな、俺達がデメリットに気付くのが遅れたとは言え早く伝えないと最強のパーティーの弱体化させてしまうかも知れない」

「そうなったらグレイが責められちゃうかもだし、直ぐに手紙を出そう」


 グレイの付与魔法のデメリットが発覚したのだ。それを直ぐにでも紅蓮翼団に伝えなければ後々になって問題になってもおかしくない。ただよくよく考えればあれほど強い魔法にデメリットが無い方がおかしいのだ。もしかしたら俺達とは経験も頭も違うあの団長であれば既に気付いているかも知れない。


「でも、これは俺達には朗報なのかもな」

「うん? どういうことだ?」


 早足でギルドに帰りながらも俺は思わず綻ぶ口元を隠せない。その言葉にフレドルドが尋ねてくる。


「グレイの魔法は本当に凄いが俺達自身の成長速度は遅くなってた。でも、今俺達は今まで以上に成長が速いってことだ。それはグレイに追いつくのが早くなるってことだ。それにグレイの魔法のお陰で俺達は自分達以上の敵と戦う経験が出来てる。それはステータスが伸びれば伸びる程その経験を活かせるってことだ。だからこそ良かったと思うんだ」

「成程。確かに私達はパーティーとしての経験値はあるのにステータスの方の経験値は少なかったってことだもんね。そのステータスの伸びが良くなれば……」

「自然、グレイに追いつくのも早くなるってことか」


 俺の考えを伝えると何故俺が笑っていたのかを理解したフレドルドとラーシアも笑顔になる。グレイと言う最強の付与魔法を持つ付与術師に追いつかなければならないと不安になっていたが、今まで以上に成長出来る可能性があればそれだけあのグレイに追いつくのも時間の問題だ。

 グレイと別れてからあまりにも弱体化した感覚にグレイに追いつくのはいつに成るのだろうと思っていたところにこのレベルアップでむしろ今まで以上にレベルアップもステータスの伸びも良いと言うことがわかった。遠いと思っていたグレイの背中が少し近づいた気がして嬉しくなってしまったのだ。

 このデメリットを伝えなくてはと言う焦りよりもここから成長出来ると言う気持ちの高揚に自然に歩幅が大きく成る。



「デメリットですか。わかりました、グレイさんが居るであろうギルドに連絡して起きます」


 早足でギルドに帰ってくるとロードコボルトの討伐よりも先にグレイの付与魔法についてのデメリットの説明を至急紅蓮翼団に伝えて欲しいと頼む。シエダもその報告を聞くと直ぐに連絡用の魔法具を使うために奥に消えていった。

 その間に俺達は受付から離れて改めて自分達のステータスを確認する。酷使すれば酷使する程成長するとわかったことから更にステータスで欲しい部分を考えて行動する必要が出てきた。


「私は魔力量を増やすために毎日魔法の練習した方が良さそうだね」

「俺達は俊敏性を上げた方がいいだろうから、走り込みとまでは言わないがダッシュはした方がいいかもな」

「まだ分からないがダンジョン内でしかステータスに反映されない可能性もあるな。そういう実験も出来ると良いな」


 それぞれがステータスを見ながらステータスを伸ばす方法を考える。今まではその辺りはダンジョンをクリアすれば勝手に上がると言う感覚でいたが今回のレベルアップでちゃんと育てると言う意識が出てきた。

 その為に実験的にダンジョンを使う必要が出てくる。またサーゴブリンやロードコボルトが居るダンジョンに潜って中で身体を酷使した結果やダンジョン以外でのトレーニングがどれほどステータスの上方に影響があるのか実験をしたい。


「先方には伝えましたが、団長はそういうこともあるだろうと仰っていたそうです」

「やっぱりあの団長は違うなぁ」


 報告を終えたであろうシエダが見え再び受付に戻ると紅蓮翼団に伝えた結果、そういう可能性もあるだろうと言う答えが返ってきたと教えてくれた。流石最強と呼ばれるパーティーを束ねる傑物だ。最強の付与術師だと推薦した俺に文句でも言ってくるかと思ったが強すぎる力には当然その反動となるデメリットが存在すると予想していたのだろう。ただグレイの魔法は凄いとメリットの部分だけに目を向けていた俺達の言葉を聞きながらもそういう程度のことは考えていたようだ。


「流石はシュートベット・シグレアスってことか」

「あの人は本当の意味でレベルが違うな」


 警告の為に急ぎで伝えた報告をそういうこともあるで流されるとその思慮深さに感嘆してしまう。それこそデメリットを伝えずにパーティーに加えてくれと言ってしまった俺に文句の一つや二つ飛んできてもおかしくないのだ。それをそういうこともあるとだけ伝えてくるあの団長の器の大きさも見習いたい。


「では、改めまして今回のダンジョンの報酬と魔石の換金を行ってきますね」

「ああ。頼む」


 紅蓮翼団への報告をしてくれたシエダは先程預けた魔石を持ってもう一度奥に消えていった。

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