若者は年長者に苛立ち、年長者は若者を嘆く。
男は女を理解できず、女もまた男を値踏みする。
本作に登場するのは、どこかで見たことのある不満を抱えた老若男女たちです。
それぞれの主張には、思わず頷きたくなる鋭さがあります。
働き方、世代間格差、無意識の偏見、男女で異なる扱われ方。現代社会に漂う息苦しさを、容赦のない言葉で切り取っていく。
けれど、読み進めるうちに気づかされます。
誰かを一方的に笑えるほど、人間は単純ではない。
人は正しさを語りながら、同時に打算や欲望を抱えている。
他人の矛盾にはすぐ気づくのに、自分の矛盾にはもっともらしい理由をつけてしまう。
本作は、そんな人間のどうしようもなさを、下世話な笑いと鋭い毒で遠慮なく突いてきます。
老いも若きも、男も女も、善人も悪人もない。
誰もが少しずつ身勝手で、滑稽で、必死に今日を生きている。
露悪的で、際どくて、決して上品ではない。
それなのに、読み終えたあとに残るのは、不思議と人間への嫌悪だけではありません。
憤慨し、欲望し、間違えながら、それでも生きるしかない私たちへ。
――踏ん張れ、現代人。
この投げやりにも聞こえる一言が、最後には妙に温かく胸へ残る、痛烈で人間臭い短編集です。