第12話「編集室」



放課後。


視聴覚室。


「素材。」


豊はSDカードを小梅に渡した。


「ありがとう。」


小梅はパソコンに差し込み、映像を確認する。


「……きれい。」


「今日、光よかった。」


「うん。」


画面には校門、廊下、中庭、部活動。


どれも自然な映像だった。


「ここ。」


小梅がタイムラインを止める。


「少し長い。」


「三秒。」


「短くする。」


「了解。」


豊は隣で別の映像を見返す。


「このカット。」


「使える。」


「うん。」


二人の会話は短い。


でも、それだけで編集はどんどん進んでいく。


それを見ていた先生が驚いた。


「二人とも……。」


「編集、慣れてるね。」


豊と小梅の手が一瞬止まる。


「……少し。」


豊が答えた。


「趣味です。」


「そうなんだ!」


先生は納得したように笑う。


「文化祭が終わったら、学校の公式動画もお願いしたいくらいだよ。」


「……。」


豊と小梅は顔を見合わせた。


心の中では、


(普段から何万人に向けて動画を作っています。)


と言いたかった。


もちろん言えない。


「先生。」


小梅が口を開く。


「テロップ。」


「読みやすくします。」


「お願い!」


一時間後。


一本目の試作品が完成した。


先生は動画を見終わると、大きくうなずく。


「すごい!」


「初めてとは思えない!」


「テンポもいいし、見やすい!」


クラスメイトからも拍手が起こる。


「北岡、こんな才能あったんだ!」


「大野さんもすごい!」


豊は少し照れながら、


「……ありがとうございます。」


と答えた。


帰り道。


「褒められた。」


「うん。」


「うれしい?」


「少し。」


小梅は小さく笑う。


「私も。」


夕日が二人の背中を照らす。


学校ではまだ誰も知らない。


今日褒められた"初めての編集"は、二人にとっては何百本も動画を作ってきた経験のほんの一部だということを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る