読み終えたあと、胸の奥に夕焼けが残るような作品でした。
信じることという少し重いテーマを扱いながら、説教臭さは一切ありません。これは善悪を語る物語ではなく、自分で信じるものを選び直す少年の物語でした。
序盤では、主人公は「神様なんていない」と言いながら、母親に植え付けられた"罰"への恐怖から逃げられません。その矛盾がとてもリアルで苦しく、読んでいて胸が締め付けられます。
そこへ現れる空本青晴。
彼は主人公を救おうと大げさな言葉を並べるわけでも、信じることを否定するわけでもありません。
「神様、見に行く?」
この一言が、本作のすべてを象徴していました。
連れて行かれた先にあったのは神殿でも奇跡でもなく、夕立のあとに現れた虹と夕焼け。
あの場面は本当に美しかったです。
そして何より心を打たれたのは、青晴の
「俺は、神様っていると思うんだよね」
「そう考えた方が楽しいから」
という言葉。
この価値観に救われました。
信じなければ罰が当たるのではなく、 信じたら少し幸せになれる。
主人公が初めて出会った"優しい神様"だったのだと思います。
ラストの
「俺のカミサマは、違うんです。まだ見つかってないから、探そうと思って」
には思わず鳥肌が立ちました。
信仰を捨てた話ではなく、自分自身の意思で信じるものを探し始めた瞬間。その成長が本当に美しかったです。
タイトルの『旅立ち、夕立』も読み終えると意味が変わります。
夕立はただの雨ではなく、主人公の心を洗い流し、新しい一歩を踏み出すための通過儀礼だったのだと感じました。
読後感は爽やかで、それでいて深く考えさせられる作品です。
苦しみから始まる物語なのに、最後にはちゃんと空を見上げたくなる。
そんな優しくて美しい青春小説でした。続きをぜひ読ませてください。