平家物語。学校の古文の授業でよく出てくる作品である。平安時代末期の動乱の中、平清盛が率いる平家が戦い、栄え、そして滅んでいくさまを仏教的な観点から捉えた傑作中の傑作。その名を知らない人はこの日本でそう多くはないだろう。一説には、この物語のおかげで日本の識字率は上がったとも言われるほどの作品だ。
さて、この平家物語は遥か昔に書かれた作品だが、読んでみると意外と現在に通じるところがあるのだという。愛欲に狂った男の末路、ある若武者のプライドの行き着いた果て。今となっては平家も武者も存在しないが、ページの向こう側で躍動する人々の姿は意外なほど現代人に似ている。不思議な気分だ。我々とあの世界の間には数百年という凄まじい分厚い壁があるというのに……
進化し続ける世界。それでも変わらないモノが、平家物語にはある。
カクヨム文芸界異能の師、青山翠雲氏が、バーカウンターでシーバスのロックダブルでもやりつつ語り掛けるような、一見高尚で小粋に見えながらも、奥底に欲望を内包したエロ話でございます。
いやあしかし、面白かったです。それと源平合戦の全容を薄く広く理解できました。
両軍の男女の情感溢れるエピソード(節操なく敵方の女になったりするんだw)と、それを掘り下げる鋭くそして楽しい考察。
この密度の作品を次々に出してしまう氏の創作体力は、もはや絶倫レベルと言って過言では有りません。ほんとに盛助平もびっくりですよ。
特に関心したのが、源氏と平家は、歴史を通じて男女問わず混交の機会があったわけですが、「一体、何をしているのだ? と一歩引いて俯瞰してみると滑稽にさえ思えてくる。平家の旗印は赤、源氏の旗印は白であるのも何かの暗示なのではないかとさえ思えてしまうくらいである」という第4話の締めですね。要するに、翠雲さんは、「お互いが掛け合われされたら、ピンクじゃないか!?」と、直接言うと下品に聞こえるようなことを、そうとは言わずに読者の脳内に再生させているのです。
こういうところに高い筆力と実力を感じますが、何を書いても、どこかでエロに言及しないと気が済まないのが翠雲さんのお茶目なところですね。
今回も安定のクオリティ。
源平の勉強にもなる本作。
お勧めいたします。