読後は切なくも、決して暗くはなく温かみを感じました。
“最期の日”が近づいても特別なことは何もなく、日常は流れていく。
それでも確かに終わりの時は近づき、“死”によって押し出された言葉が涙とともにあふれ出る。
しかしだからといって、“死”を前にしたからといって、そのすべてをこぼさず受け取ることは叶わない。明日明後日が“最期”だとしても、人の心や人格が変わるわけではない。同じようにうどんをすすり、同じように映画を観て、同じようにケンカしてすれ違って、同じように仲直りして眠る……
でもそれでいいのだろうと、本作を読んで思いました。
人生が“ハレ”と“ケ”の連続なら、日常や生活という“ケ”の中で迎える穏やかな最期が、二人にとっての一番の幸せだったと願わずにはいられません。
端正で流れるような文章が美しく、“死”の対象に置くのが哲学的な“生”ではなく、生活感あふれる“日常”であることで、読み手の胸によりすっと入るような読み心地でした。
素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました。