全5話・18,563文字、拝読しました。「魔王討伐前夜」という、多くの勇者ものが素通りする一夜にスポットを当てた着眼点がまず秀逸です。
第1話の完成度に唸りました。「解散宣言」への四者四様の反応、僧侶いじりの小エピソード、戦士加入の顛末、それぞれのリアクションを挟みながら4000字ほどの中に多くの要素を畳み込んでいるのに、駆け足感がありません。過去の回想に必ず「今」のキャラクターの相槌や笑いが挟まる構成が、情報の羅列を"みんなで思い出を分かち合う時間"に変えています。
描写力も特筆に値します。「沈黙をかき消すように、風に揺らされた木の葉がざわついた」――第4話のこの一文のように、直接的な心情描写を挟む前に、風景そのものに一拍語らせる技術は、Web小説の中でもかなり上位に位置すると感じました。
一本の話として最も面白かったのは第2話です。拉致され、鎖につながれ、仲間を人質に取られてなお、魔法使いはその脅しを歯牙にもかけません。「よほどそのちゃちな作戦に自信があるらしい」という地の文の一言が、彼女と領主の格の差を鮮やかに示しています。そして結局、彼女が本気で怒った理由は監禁でも脅迫でもなく「助けに来なかったこと」。この笑いの落とし方が実に痛快です。しかも屋敷を消し飛ばしながら貴族には怪我ひとつ負わせない精密さまで見せてくる。この一話で勇者一行の規格外さが説得力を持って伝わり、「この五人なら魔王討伐もありうる」と読者に思わせてしまうのが見事でした。
各話のトーンの振れ幅も見事です。コミカルな加入譚(1話)、痛快などたばた劇(2話)、貧困と救済の重い物語(3話)、静かな優しさ(4話)と、全く異なる温度の話が並ぶのに、「勇者が相手の抱えているものを見抜き、証明の機会を差し出す」という一貫した型が根底にあるため、バラバラな印象になりません。
そして最終話、偽物の聖剣という"外形的な称号の嘘"と、日々の行動の積み重ねで本物の"勇者"になっていった主人公の対比が見事に響き合います。「あなたは間違いなく、私たちの勇者だったわ」――過去形で贈られるこの称賛が、タイトルの「ノスタルジア」の意味を最後に明かしてくれます。
一点だけ。第4話の少女のエピソードは、自己否定の言葉をやや長く独白させる前半と、一度の実演だけで結論に至る終盤の変化に、わずかな性急さを感じました。前半を子供たちの言葉を通した描写に替え、終盤の少女の変化にもう一段の余韻を残せば、この短編集で最も静かなこの話が、さらに深みを増すと思います。
高校生の投稿とは思えない構成力と描写力です。次の作品も楽しみにしています。
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