満州事変が起きたばかりの初冬、大陸で起きた陸軍内部の事件。
探偵役として挑むは、冷静沈着な海軍軍医少佐。整形外科医で、糸目。
執刀すれば華麗なるメス捌き、切れ者と見せて意外にも、……え、糸目なのに振り回される側!?糸目なのに?
ギャップ萌え、可愛い。
振り回してる策士な中尉とのやり取りは、思わずニヤニヤしてしまいます。
主題となるミステリーも、この時代、そして軍内部ならではの背景や動機が絡むところが面白い。
かといって専門性が高すぎるわけでもなく、ライトに混ぜる手腕が心地よい。
バディものとしても、ミステリーとしても、軍ものとしても満足できます。
この三つの魅力のバランスが優れた中編です。
漫画原作コンテスト用作品とのこと、様々な感情を滲ませる糸目、ぜひともコミカライズで見たいです!
一般小説での流行が記憶に新しい「歴史小説」×「ミステリー」の組み合わせの作品。
時代考証とミステリーという二重の気難しさを持つこのジャンルで、本作は昭和6年という執筆体力のいる時代を選択しました。
主人公河村と策士とも言える二階堂、一筋縄ではいかない軍医ふたりが見詰めているのは、戦争の行く末ではなくミステリーという視点の昭和6年。人命が紙のように軽い時代にあって、ミステリーもまた「史実」という異なった視点で、真新しく生まれ変わります。
漫画で重要なことの一つに「この作者でしか読めない何かがあるか」があると思います。本棚を埋め尽くす古典や、チラシのように無料配信されるあまたのweb作品群から抜け出す切っ掛けになるからです。
「この作者にしか書けない」には色んな形があると思いますがその一つは専門知識です。本作の専門知識のコアは医療と戦争のハイブリッドで他の作者にはないものです。
医療トリックを毎回考えるのは大変だと思いますが、2話の謎解きは本当に知らない知識ばかりでしたし、今回の5話で知識のデモンストレーションをやりきったこの作者さまなら、連載という時間との闘いの中でも、きっとこの難しい時代を書き遂げられるに違いないと思いました。
女性誌のさっぱりした絵で読んでみたい気がしますが、男性誌のいかつい絵でも合うかも知れませんね。
【レビューコンテスト応募】
こんな軍人が、いていいのか。
糸のような目で人を見透かし、メスを握れば誰よりも速く、正確で、迷いがない。なのに羊羹一切れには目の色を変える。この温度差、たまらない。
こんな切れ味の会話、読みたかった。
皮肉を投げれば皮肉で返ってくる。沈黙すら武器になる。どのページを開いても、台詞の応酬にピリッとした緊張が走る。
こんなスリルが、欲しかった。
宴席で人が倒れる。血。抜刀。跪く河村の首元に突きつけられる刃。そこから毒を煽り、謎を解き、また新たな死体に出会う。息をつく暇がない。
そして、あの男。
おどおどした後輩の顔をして、その裏側には底知れない笑み。優しさと悪意の境目がわからない。信頼していいのか、いけないのか。ページをめくるたび、その天秤が揺れる。
これは、原作として見たい。河村の細めた目も、二階堂の底知れない微笑みも、コマの中で動くところを見たい。