その2
チャーハン?
これ納豆チャーハンか!?
にしては、テカテカ光ってるし、何か所どころ真っ白な破片が混ざってるぞ。
「そ……
そう……
チャーハンなのね……
この物体……」
コクリ
えぐえぐとべそをかきながら頷く餡子。
「泣きたいのはこっちやわっ!?
ワシ、ウンコチャーハンで天寿迎えなアカンねんぞっ!?
まだ多少マズいくらいやったら泣いとってもエエかも知れんけどナァ!
こんなんウンコやん!
ただのウンコやん!」
この声は全部、テーブルの上の納豆チャーハンから。
曲がりなりにも口に入れる食べ物がウンコウンコと叫ぶのはどうなんだろう?
「あー……
確か精霊って、一期一会だったっけ……?」
御覧の通り、何か世の中は変わった。
何年か前から料理が喋る様になってる。
世間ではこれを精霊って言うらしい。
さっきからキツめの関西弁で怒鳴り散らかしてるのは納豆チャーハンの中にいる精霊が話してる。
「そや!
ワシはワシでしかない!
あとで美味い納豆チャーハンを作ったとしてもそれはまた別の奴や!
……おいクソ女ァッ!」
「へ……?
あ……
あたし……?」
「お前以外に誰がおるんじゃ!?
オイ、ワシを捨てるなんて許さんからなっ!
責任もって食えや!
きちんと食ってちょっとでもマシな天寿にせんかい!」
で、普通の精霊達はこんなに乱暴に怒鳴ったりしない。
もっと穏やか。
人間が食い辛いだろうと食べられる時は黙っていたりと
正直、こんな怒りながら喋り散らかす精霊って言うのも見た事が無い。
少なくとも餡子の料理以外では。
まあ
納豆チャーハンがこれだけ怒っている理由はさっきからチョコチョコ出てる天寿とかいう現象?
……って言うのかな?
よく解らないけど、それが関わってて、その天寿を全うする為に精霊達は存在しているんだって。
で、その天寿って言うのは料理の美味しさによって変わるらしく、より美味しければよりよい天寿を全うする事が出来るって話。
……そりゃあ、そんな中で悪臭を放つチャーハンを作られたら怒るわよね⋯⋯
「えっえっ……?
そ……
そりゃあ食べますよォ~~
……モグモグ……」
食べた。
あのウンコの匂いがするチャーハンを。
「ね……
ねえ、餡子……?
そんなの食べて大丈夫……?」
「ん?
モグモグ……
別に美味しいよ?
もなちゃんも、ちゃーはんさんも大袈裟なんだよ~~
確かにちょこっとクセのある匂いかも知れないけどォ~~」
「ほ……
ホント……?」
私は恐る恐るマスクをズラした。
ツンッッ!
鼻の奥に刺激。
同時に嗚咽と胃液が食道を駆け上る感覚。
いや、無理。
絶対に無理。
私はすかさずマスクを戻す。
あ、そうだった。
「十三……
ハァ……
残飯一歩手前や無いかい……」
何か納豆チャーハンもテンションが下がった様子。
いや……
「あの……
精霊さん……?
その十三って言うのは……?」
「天寿値に決まっとるやろ……
ハァ……」
これは落胆。
あまりの低さに絶望しているんだ。
天寿のランクは上下があり、数値化しているらしい。
確か普通の主婦の手料理で50前半。
で、一桁とかになると傷んだ料理とか残飯とかになるって話。
「えぇ~~?
そんなに低いかなぁ~~
絶対おかしいよォ~~
ホラ……
モグモグ……
美味しいじゃん……」
「いや、おかしいのは餡子の舌……
いや鼻の方だから」
「ぶ~~、じゃあ良いよ。
私のヌル子ちゃんに聞いてみるから」
そう言って立ち上がった餡子が戸棚から取り出したのは大きな体温計みたいな白い機械。
あれは天寿値算定機。
名前はNLC。
何か知らないけど餡子はヌル子と呼んでる。
ガー……
お……
しい……
しょくじを……
餡子のNLCは実家から持って来た初期のもの。
古いせいか起動した時の声が惜しい食事をになってる。
本当は美味しい食事をあなたに。
なんだけどなあ。
ズボ
納豆チャーハンの中にNLCの突起を差し込んだ。
「ザザッ……
12……
問題外です」
「ほれ見てみいっ!
ってかワシより下がっとるやないけアホンダラッ!」
「ヒィッ……
じゃ……
じゃあどうしたら……」
ここでとんでもない提案が飛び出す。
食べられる側の納豆チャーハンから。
「しゃあないなあ……
じゃあ、そこのお前」
「へ……?
私?
な……
何ですか?」
猛烈に漂う嫌な予感。
自然と敬語になってしまう。
「お前が食え」
マジか。
続く。
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