第22話 陽菜ちゃま
「では、そろそろ早戸さんの着せ替えタイムと行きましょうか」
ふっふっふっと声を漏らしながら口角を大きく上げる都城さん。
「ほ、本当にやるんだね。お手柔らかにお願いします。都城さん」
「……」
覚悟を決めて彼女に向き合うと、なぜか都城さんは一瞬で真顔に戻り、私の顔を見つめていた。
「さっきみたいに『さやか』で良いですわよ」
「うぇぇ!?」
「なんですかその反応! 嫌なのですか?」
「嫌ではないけど……」
なんか……恥ずかしいだけで。
「でも、貴方こそ良いの? こんな立派でお金持ちなお嬢様なのに、私みたいな庶民に名前呼びされて」
「立派なお金持ちは両親だけですわ。私自身はまだ自分でお金を稼いだことがない庶民です。いえ、功績で言えば立派にアルバイトしているクラスメイトの方に大きく劣りますわ」
「そ、そか……」
この人たまにこういう謙虚な姿勢を見せるんだよなぁ。
お金持ちを笠に着ても困るけど、こういう庶民に寄り添う姿勢も素敵で困る。
「さ、さやか……さん」
「なんで『さん』付けするのですか!! 私を舐めているのですか!? 呼び捨てじゃないと嫌ですの! 嫌ですのー!」
「さっきの寄り添う姿勢はどこにいったの!? ていうかキレる理由そこ!?」
「ミサリンチョには呼び捨てにしているのに、私にだけ差別するなんてずるいです! ミサリンチョに嫉妬です!」
「ミサを呼び捨てにするのと都城さんを呼び捨てにするのは違うでしょ!?」
「一緒です! ていうかまた『都城さん』って言いました! なんで戻るのですか! 勝手にタイムスリップしないでください!」
我儘お嬢様というより駄々っ子お嬢様だこれ。
でもこういう幼さがちょっと彼女っぽくて安心した。
「分かったよ。さやか。私のことも『陽菜』でいいからね」
「わかりましたわ……陽菜……様」
「自分への『さん』付けは許さないくせに、私には『様』づけするのはさすがに理不尽なんだけど!?」
「ご、ごめんなさいごめんなさい! ひ、ひ……」
「ひ?」
「陽菜……ちゃま」
「……」
なぜだろう。
初めてそう呼ばれたと思うのだけど、妙に馴染みがあるのは……
「まぁ、二人きりの時はそれでもいいけど、さすがに変なあだ名過ぎるから学校では呼び捨てにしてね」
「全然変ではありませんわ! 変さ具合で言ったらミサリンチョの方が変です! ダントツで変です!」
「確かにそうだけど! ていうかさやかがそのあだ名付けたんだよね!?」
変って自覚あったんだ。
哀れ、ミサ。
この場に居ないのにいじられまくりなのが何ともミサっぽいなぁと私は思った。
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