第2話 わたしのおしごと
私はキャリー。
まだ一歳の赤ちゃん。
私が変換スキルを使ってから一月たった。
父さまと母さまは、小麦の収穫が終わった畑に野菜の種を蒔いている。
毎日畑に出て忙しそうだ。
私はいつもの木の下でいつもの籠の中に寝かされ良い子にしているが、お昼頃になるとお手伝いをする。
母が私を抱っこして、畑の周りで雑草が生えている場所に連れて行く。
「さあ、キャリー。リンゴ魔法をお願いね」
「あい! へんかーん! リンゴ!」
雑草が直径一メートルほどの範囲で消えてリンゴが現れた。
そう、私のお手伝いは除草だ。
ここは開拓地だから畑といっても、日本の農地のように整備されていない。
畑の周りに雑草が沢山生えている。
けれども働き手は少ないので除草に手が回らない。
そこで私の出番だ。
除草が出来てリンゴが手に入る。
一石二鳥。私! 天才!
「ありがとう! キャリー!」
「キャリーのおかげで毎日リンゴが食べられるよ!」
母さまと父さまは大喜びだ。
私は毎日せっせと雑草をリンゴに変換している。
一日にリンゴ二個だ。
感覚的な話になるけれど、一日にリンゴ二個なのは、魔力の量だと思う。
もっと沢山リンゴを生み出して、父さまと母さまを喜ばせたい。
早く魔力が増えないかな。
ちょっと気になっているのは、父と母が『リンゴ魔法』と私のスキルを呼ぶことだ。
どうやら父と母は、私の変換スキルを魔法だと思っているらしい。
どうなんだろう?
変換スキルは、元となる素材と魔力が必要になる。
魔力を使っているけど……。
変換スキルは転生する時に神様からもらったスキルで、魔法とは違うと思うの。
しかし、『神様からもらったスキル』なんて言ったら、どんな影響があるかわからない。
私はまだ幼児で、この異世界について知らない。
例えば『この子は神の子だ!』とか言われて、宗教施設で一生暮らすことになるかもしれない。
そんなことはゴメンだ。
嫌なことを考えたら何だか悲しくなってきた。
まだ一歳児だから感情のコントロールがきかない。
「うえっ……うえっ……」
「まあ、キャリーどうしたの? 母さまはここよ」
「父さまもいるぞ。よしよし」
私がむずがると母さまが背中をポンポンと叩き、父さまが頭を撫でてくれる。
優しい両親で幸せだ。
前世で私の家族関係は悪かった。
だから転生する時、神様に『幸せな家族を下さい』と願った。
異世界転生して優しい両親を得たのだ。
私は父さまと母さまから離れたくない。
(変換スキルは内緒にしよう!)
私は泣き止み、母の胸に体を預ける。
良い匂いがする。
「あら、ご機嫌が直ったのね?」
「あい!」
私はまだ複雑なことが話せない。
頭の中で思考することは出来るのだけど、思考したことを上手に言語化することが出来ないのだ。
父さまと母さまの話す言葉が、異世界の言語だということもあるけれど、どちらかというと脳の発達度合いが原因だと思う。
きっと脳も成長中。脳の中でニューロンが組み上がっている途中なのだ。
前世日本人の記憶があるので、頭の中に大人の思考があるけれど、体はまだ一歳の幼児。
どうせ上手く話せないなら、変換スキルのことを聞かれても一歳児らしく『わからない』とすっとぼけておけば良い。
雑草をリンゴ二個に変換して、除草作業は終わった。
いつもの木の下に置いたいつもの籠に、母が私を寝かせる。
私は何か感じた。
「あっ!」
スキルがレベルアップしたのが感覚的にわかった。
心の中でスキルを強く意識すると目の前に透明な板が現れる。
■―― 神からのギフト ――■
変換スキル:物質を違う物質に変換する。魔力が必要。
レベル1:リンゴ
レベル2:未設定
―――――――――――――――
やった!
レベル2になった!
どうやら変換スキルは、使えば使うほどレベルアップするようだ。
変換スキルのレベルが上がれば、変換できる物の種類が増える。
そして変換スキルを実行するには魔力が必要だ。
私の家は貧しい。
食べる物が必要だ。
もっと変換スキルを使って食べ物を増やしたい。
だが、魔力が足りないから一日にリンゴ二つが限界だ。
(ということは、魔力を増やせば良いのかな? 魔力を増やすって、どうやるの?)
私は籠の中でおくるみに包まれながらウンウンうなった。
(あっ……そうだ!)
スキルは使えば使うほどレベルアップする。
それなら魔力も使えば使うほど増えるんじゃないかな?
変換スキルを一日に二回使うけど、魔力が余っている感覚があるのよ。
魔力が余っているけど、変換スキルをもう一回発動させるには足りない感じ。
この余っている魔力を消費すれば、魔力が増えるんじゃないかな?
前世日本のファンタジーアニメで見た魔力切れってヤツね。
私は自分の思いつきが名案に思えた。
とはいえ、私は父さまや母さまのように魔法が使えない。
どうやって余った魔力を使えば良いのだろう?
(ううん、もどかしい……)
考えていたら面倒臭くなった。
私はおくるみから右手を引き抜き、いつもの木の幹にペタッと触った。
「魔力を上げましゅ」
そして木に魔力を注ぐイメージをする。
すると私の小さな右手から何か温かい物が木へ移動して行く。
(あ……、これが魔力だ……)
ジワジワっと魔力が木に注がれて行く。
魔力が減るにつれて、私は眠たくなってきた。
まぶたが重い。
日差しが気持ち良い。
私はこのままお昼寝することにした。
レベル2……何に変換しよう……?
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