雨の日の神社での出会いから始まる、少し不思議な学園青春ファンタジーです。
「日常の中に非日常の痕跡が静かに浮かび上がってくる瞬間」
音楽のリスニング中や書道の授業といった、誰もが知る普通の高校のワンシーンに、古文書や反響定位といった伝承・科学の要素が違和感なく溶け込み、世界観の奥行きをグッと広げてくれます。
人間とは違う時間を生きるがゆえの孤独や戸惑いを抱える少女・透花と、彼女と向き合いながら共に時間を重ねていく主人公・瞬の心の機微が、丁寧な筆致で描かれています。
周囲を見守る大人たち(高梨兄妹など)の絶妙な立ち位置も物語に深みを与えています。
作者の意図として感じられるのは、単なる「異類との恋愛・別れ」を描くことではなく、「誰かと本当の意味で心を通わせ、時間を共有することの尊さ」を伝えることではないでしょうか。
騒がしい日常の愛おしさと、胸を突くような切なさが同居する、すべての物語好きに推したい一作です。