S2-04 Isolation
大地は、
仮面を被る。
振り向く。
横たわる頬へ、
そっと、唇が触れた。
真彩
「寂しいな…」
『頑張ってね』
Dovira
【行っちゃうの…?】
Ratio
【仕事なので。】
大地
「ああ、後でな」
手を、
振り上げた。
部屋の、
扉が閉まる。
Dovira
【少佐から通信あり。どうする?】
真彩
「どうするって、無視していいの?」
Dovira
【さあ。】
真彩
「出るよ」
Dovira
【了解。】
ラファルサ
[お前、どこに居るんだ。]
真彩
「え…どこって」
起き上がる。
見渡す。
真彩
「どこだろうここ」
首を傾げる。
Dovira
【中佐の私室だよ。】
真彩
「は?」
ラファルサ
[ “は?” はこっちのセリフだ。]
[いい。そっちへ行く。]
真彩
「…みなさんで来るんでしょうか?」
ラファルサ
[…いや。直樹と俺だけだ。]
真彩
《よかった…なにが?》
「わかった。待ってる」
Dovira
【通信終了。】
---
Dovira:
I’d love to see what’s going on over there!
Senior, I’m passing the baton over to you!
Naparnik:
Right, right, got it…
---
直樹
「ねえ、ラファにぃ」
「おねぇちゃん達、どこ行ったの?」
少佐の、
腕を引っ張る。
ラファルサ
「会議室…だ」
《で…わかるだろうか…》
直樹に、
視線を合わせる。
Naparnik
【分かればいいですね。】
ラファルサ
「食べたい物、決まったか?」
直樹
「…」
Naparnik
【困ってますね。】
直樹
「おにぎり…ないの?」
ラファルサ
《あ…》
メニュー表は、全て英語。
額に、
手を触れた。
ラファルサ
《わかるわけ…無い》
「おにぎりはないが…」
直樹に、
そっと屈み。
ポンッと、
肩に触れた。
ラファルサ
「待ってろ」
食堂の、
従業員へ、
声をかける。
ラファルサ
「Could I have a rice ball, please?」
(おにぎりをお願いできないだろうか)
従業員
「I don’t mind, but… how do you go about it?」
(構わないけど…どうやるんだい)
「You wrap the rice in your hand.」
(お米を手で包むんだ)
手で、
ジェスチャーする。
従業員は、
肩をすくめた。
従業員
「I’ll give it a go. Hang on a moment.」
(やってみるよ。待ってて)
ラファルサ
「I’d like two, please.」
(二つ頼む)
厨房の、
奥から声が聞こえてくる。
従業員
「Understood!!」
(あいよ!!)
直樹へ、
視線を戻した。
ラファルサ
《ん?》
目が、
キラキラしている。
直樹
「ラファにぃ、カッコイイ!!」
思わず、
頬が熱くなった。
小さく、
視線を逸らす。
従業員
「How about this?」
(これでどうだ?)
袋に、
二つの塊。
ラファルサ
「Oh, how grateful I am.」
(ああ、ありがたい)
「I’ll have some onion soup as well.」
(追加で、オニオンスープも頼む)
従業員
「Understood!!」
(あいよ!!)
品を、
受け取る。
ラファルサ
「Thank you.」
従業員は、
直樹に手を振った。
従業員
「What a cute little lad.」
(坊や可愛いわね)
直樹は、
手を振り返した。
従業員
「Bye!」
直樹
「バイバイ」
ラファルサ
「行こう」
直樹
「うん」
直樹の、
手を取る。
小さな、
手が握り返す。
二人は、
食堂を、
後にした。
通路を、
歩く二人。
直樹
「ねえ、ママどこに居るの?」
ラファルサ
「ん?」
「医務室だ」
Naparnik
【本当でしょうか。】
ラファルサ
《どういう意味だ》
Naparnik
【いえ…。】
直樹
「医務室って…保健室のこと?」
小さな、
瞳が、見上げる。
ラファルサ
「まあ、そうだな」
通路を曲がる。
正面から、
雑談しながら歩く部隊員。
少佐は、
立ち止まる。
ラファルサ
「おい!」
『待機はどうした』
横目で見て、
通り過ぎる部隊員。
ラファルサ
『無視とはいい度胸だな!』
部隊員
『はいはい、部隊長様』
笑い声。
直樹
「ラファにぃ…?」
不安そうな表情。
Naparnik
【やめた方が…。】
ラファルサ
「すまん…」
「行こう」
小さな手が、
強く握られた。
医務室前。
――コンッコンッ
中から、
声がする。
医療班
『入ってどうぞ』
カーテンを開けた。
少佐は、
目を見開く。
医療班
「どうされました?」
「あら、かわいい」
ラファルサ
「中佐は…」
医療班
「え?来てませんが」
Naparnik
【やっぱりな。】
ラファルサ
《お前、なぜ言わない…》
Naparnik
【え?いや、別に…。】
袋を、
持つ手に力が入る。
ラファルサ
《Doviraに連絡しろ!》
Naparnik
【相棒。】
ラファルサ
《早くしろ》
Naparnik
【…分かりました。】
---
Naparnik
【Dovira, answer me!】
(Dovira応答しろ)
Dovira
【What’s that?】
(なあに?)
Naparnik
【Where are you...】
(どこにいる…)
Dovira
【This is my husband’s room.】
(旦那様のお部屋よ)
---
Naparnik
【相棒。あいつなら中佐の私室いますよ。】
ラファルサ
《真彩に通信しろ》
Naparnik
【了解。】
---
Dovira:
That’s enough, isn’t it?
Senior, please give me a break.
Naparnik:
I’ve got it, I say…
---
扉の前で、
立ち止まる。
直樹
「ここ?」
少佐を、
見上げる。
ラファルサ
「ああ」
扉の、
スキャナーへ手をかざす。
[I will refuse approval]
ラファルサ
《…》
Naparnik
【拒否られましたね。】
ラファルサ
《…》
「おい。聞こえるか?」
反応がない。
直樹
「ママ?」
扉をノックする。
ノックのみ、返ってきた。
直樹は、
不安そうに、
見上げてくる。
ラファルサ
『どうした』
反応がない。
真彩
『苦しい…』
遅れて、
反応が返ってきた。
ラファルサ
《相棒。Doviraと通信》
Naparnik
【了解。】
---
Naparnik
【What happened?】
(何があった)
Dovira
【…】
Naparnik
【Dovira?】
Dovira
【…】
---
Naparnik
【Doviraからの応答なし。】
ラファルサ
《どうしたんだ》
『真彩。大丈夫なのか?』
扉に、
手を添える。
真彩
『暗いよ…』
扉は、
重く、
閉ざされている。
真彩
『行かないで…』
ラファルサ
『行かない』
『直樹がいる』
直樹
「ラファにぃ?」
「入れないの?」
小さな瞳。
悲しそうに見てくる。
ラファルサ
「直樹。これ持っててくれないか?」
昼食の、
袋を渡した。
小さな手。
袋をぎゅっと握りしめる。
少佐は、
扉を強く叩いた。
ラファルサ
《相棒。扉を開けろ》
Naparnik
【…俺にそんな機能があると?】
ラファルサ
《…》
《悪かった》
Naparnik
【いえ、構いません。】
ラファルサ
「直樹、少し離れてろ」
直樹
「え、うん…」
呼吸を整え。
助走をつける。
ラファルサ
「ふんっ!!」
ドンッ!!
扉へ、
体重を掛けて体当り。
Naparnik
【ビクともしませんね。】
舌打ちした。
激しく、
扉を叩く。
ラファルサ
「真彩!!返事しろ!!」
Naparnik
【え。真彩の生命維持が低下している…。】
ラファルサ
「なっ…今なんて言った」
直樹
「え。ぼく、何も言ってないよ」
直樹へ、
振り返る。
ラファルサ
「あ…すまん。何でもない」
『いま、生命維持って言ったか?』
Naparnik
【言った。】
ラファルサ
『扉を蹴破る』
『相棒、同期するぞ』
Naparnik
【了解。…いつでもどうぞ】
ラファルサ
「直樹、そこ危ない」
「もっと奥へ」
直樹
「う、うん」
離れて行った。
直樹
「ここでいい?」
ラファルサ
「ああ。待ってろ」
Naparnik
【同期率100%。行くぜ!相棒!!】
力が、
みなぎる。
温かい、
オーラに包まれる
戦闘態勢に入る。
目を閉じる。
氣を、
集中した。
ラファルサ
《扉の脆弱な部分を分析できるか?》
Naparnik
【分析も何も、真ん中でしょう。】
ラファルサ
《…そうか》
助走。
風を切る。
扉に、
当たる足。
打撃音。
衝撃波。
遅れて届く。
――バアアーン!!
Naparnik
【歪んだだけかよ!】
ラファルサ
「もう1回!!」
Naparnik
【任せろ!】
直樹は、
圧倒し硬直する。
同時に、
憧れの視線が降り注がれた。
直樹
「ラファにぃ!!頑張れ!!」
少佐は、
視線を向けた。
ラファルサ
《…》
「ああ。任せろ!!」
《力が湧いてきた》
Naparnik
【やる気みなぎるっす!】
ラファルサ
《絶対、助け出す!》
《行くぞ!!》
Naparnik
【融合率上昇。突破します。】
再び助走。
勢いよく。
全身の、
体重を右足に賭けた。
――バアッアーン!!
直樹
「す…すごぉい!!」
興奮。
関心の目。
扉は、
変形し、
内側へ倒れた。
Naparnik
【…中は危険です。】
ラファルサ
《なぜだ》
肩で、
息をする。
Naparnik
【隔離プロトコルを確認。通信妨害もされてる。】
ラファルサ
《…なぜだ》
呼吸を整える。
直樹
「ママ…?」
部屋へ、
顔を覗き見る
ラファルサ
《安否確認が優先だ》
Naparnik
【止めませんよ。】
部屋の中を、
一緒に覗き込む。
ラファルサ
「真彩!!」
小型の、
ライトを照らす。
直樹
「いた!」
親へ、
駆け寄る。
直樹
「ママ!!」
ラファルサ
「おい!!しっかりしろ!!」
二人で、
揺さぶる。
ラファルサ
「ここから移動する」
真彩を、
抱き上げる。
直樹
「ママ…」
「やだ…ママ…」
泣き声。
ラファルサ
「直樹、行くぞ」
直樹
「うん…」
涙を、
拭きながら立ち上がる。
通路へ、
そっと、真彩を下ろした。
ラファルサ
「ナパ。真彩の状態は」
Naparnik
【…68%。数値上昇中。あの部屋変ですよ。】
呼吸、
脈を、
確認する。
ラファルサ
「生きてる」
残るは、
意識のみ。
ラファルサ
「医務室へ行く」
「直樹大丈夫か?」
直樹
「うん…」
静かに泣く。
そんな姿が、
ラファルサの心を締め付けた。
ゆっくり、
真彩を抱き上げた。
Dovira
【先輩…。これ受け取って…。】
Naparnik
【Doviraから動画を受信しました。】
【渋谷ですか…。SNSの動画ですね。再生します。】
[あのおっさん、やばくね!]
[道路の真ん中でボーとしてんだけど]
[怖くね?]
[轢かれないの地味に神だろ]
ガヤガヤ
[みなさーん、今から突撃したいと思いまーす!]
[なあ…あれ軍服じゃね?]
[やばくね?]
笑う声。
[じゃーん、兵隊さんでーす!!]
[おじさん、何してるんすか?]
ラファルサ
「誰…」
Naparnik
【相棒…何してるんです?】
動画の男は、
夜空を見上げる。
[空?]
[何?]
[指差したぞ]
撮影者はカメラを夜空を映す。
――バンッ
画面が揺れる。
激しい音割れ。
[ビックリしたぁ!!]
カメラは男を映す。
点滅するように景色が鮮明に写った。
Naparnik
【やっぱ相棒では?】
ラファルサ
《…》
[うわっ!スゲー!!]
[おじさん、魔法使い?]
ゴー…
地響きの様な音が聞こえる。
その次の瞬間、男の姿が消えた。
[あれ?居ない]
[そうだ!動画!!]
Naparnik
【再生終了。】
【何あれ…】
ラファルサ
《似てない》
Naparnik
【相棒。】
ラファルサ
《……》
Naparnik
【俺の思い違いじゃなければ。】
【…激ヤバいですよ。】
ラファルサ
《……》
Naparnik
【ここ危険だと思います。】
【絶対、相棒疑われてるって。】
【だって、さっきの扉も真彩のも変じゃないですか!!】
ラファルサ
《…だが》
直樹
「どうしたの?」
Dovira
【逃げたら…余計に疑われますよ先輩。】
ラファルサ
「医務室へ行く」
「ついて来い」
直樹
「うん…」
Dovira
【待って…駄目。】
【先回りされてる。】
Naparnik
【ほら!!】
ラファルサ
《じゃあ、どうしろと》
Naparnik
【一旦、逃げよう。代弁は後でいい。】
直樹
「家帰りたい…」
その場で、屈み込む。
涙が、
床に落ちる。
少佐は、
小さく、
息を吐いた。
ラファルサ
「わかった」
「直樹、おいで」
手を、
差し出した。
直樹は、
嬉しそうに手を取った。
静かに、
音もなく、
3人は、
姿を消した。
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