S2-02 35.6595° N, 139.7005° E

二人は、

身構えた。


風を切るように、

少佐は姿を消した。


チャーリー

『逃げろ』


真彩

『了解』


Ratio

【融合率計測中。】


チャーリー

『真彩、掛け声』


真彩

『掛け声?』


チャーリー

『少佐が消えた方向を知らせて欲しい』


真彩

『わかった』


チャーリー

『そっち行ったぞ』


一瞬、

捕まりそうになる。


真彩

「あぶねっ」

華麗にかわす。


ラファルサ

「ちっ」


真彩

『消えたよ。そっち行ったかも』


チャーリー

『後ろ!』


真彩

「連続で狙うのズルいからね」

そう言いつつ逃げた。


真彩

『そっち行ったよ』


チャーリー

「来るのか?相棒」

「躊躇してるだろう」

「その迷い、命取りになるからな」

「だからって捕まる気はないけどね」


そう言いつつ、少佐の腕をかわす。


チャーリー

『中央へ行ったよ』


真彩

『中央へ?』


二人の視線は少佐へ。


隠れもしない。

腕を組み。

目を瞑っていた。


チャーリー

『瞑想か?』


真彩

『罠だったりして』

《大地と共同だよ〜ん♪》


Dovira

【マヤ…。集中してね。】


チャーリー

『消えた!真彩気をつけて!』


Dovira

【ぎゃああああああああ!!!】


Ratio

【Dovira!! Shut Up!!】


真彩

《うっ!…ん?成る程!!》


正面を、

睨みつける。


身構える。


真彩

《いまだ!》


大きく、

拳を振りかざした。


少佐の頬をかする。

代わりに体当たりされた。


真彩

「うっ!!」


吹き飛ぶ。

砂煙が上がる。

壁に叩きつけられた。


チャーリー

「真彩!!てっめぇー!!」

少佐に突進する。


Ratio

【中佐!駄目です!!】


忠告を無視。


チャーリー

「許さねー!!」

拳を振りかざす。


Ratio

【無茶です!!】


拳を受け止められた。

胸ぐらを掴まれる。


真彩

「大地!!」

『許さない…』


二人の、

視線が真彩へ向く。


突然、

空気が振動した。


音が、

圧縮さてた様に重くなった。


Ratio

【融合率急上昇。突破します。】


真彩の

瞳が青く光る。


手には槍。


ラファルサ

「怪我をする武器はしまえ」


真彩

『黙れ!!』


チャーリー

「離せ…」

少佐は離さない。


真彩は、

姿を消した。


Naparnik

【相棒!!上!!】


二人は、

見上げた。


宙から、

槍の雨が降り注ぐ。


チャーリー

「あのバカ!!」


二人は、

瞬時に転送し、逃げ切る。


床に、

突き刺さる。


Naparnik

【あいつ、完全にMMORPGやってる。】


チャーリー

「援護する」


ラファルサ

「ああ、頼もしい!」


チャーリー

「お前じゃない」


ラファルサ

「は?」


Naparnik

【来る!!】


ラファルサ

「…っ…!!」


咄嗟に、

回避する。


――ドーン!!


衝撃とともに砂煙が上がる。


Dovira

【逃げてばかりですよ。先輩。】


真彩

「大人しくやられろよ」


煙の先に、

青白い視線が光る。


ラファルサ

「あぶねーな!」


Naparnik

【間一髪っすよ!】


Ratio

【異常な数値です。反動が心配です。】


チャーリー

《真彩…。変わりすぎだって》



-



カルディ

「んまあ!すんごい数値!!」


大佐へ、

視線を向ける。


カルディ

「んもう、おじーいちゃん。南戸大佐のお孫さんじゃないだから…」


南戸

『しー。だって…寝顔が可愛くて、可愛くて…』


優しく、

直樹の頭を撫でる。


カルディ

『そっとしておきましょう…』


少し呆れる。


大佐は、

カルディへ近づく。


南戸

『ここが危ないようなら、直樹くんを連れて避難するように』


カルディ

『大佐は』


険しい、

表情で大佐を見る。


南戸

『最後まで見届ける』


演習場を、

見つめて言う


カルディ

『…』

『未知の領域です。気をつけてください』


UIの、

数値を見つめつつ。


彼らを、

見守った。



-



槍を、

構えて突進してくる。


Naparnik

【Dovira、そいつを止めろ!】


Dovira

【先輩を黙らせます。】


Naparnik

【わからず屋!】


Ratio

【Doviraによる妨害により、制御システムへの侵入はできません。】


チャーリー

「くそっ…」

《…》

《想像以上だ…》


少佐は

真彩の攻撃を、

回避しつつ近づいてきた。


ラファルサ

「まだか!」


チャーリー

「ごめん…」


複数の、

槍の影が床を覆った。


Naparnik

【来る!】


Ratio

【範囲攻撃です!】


ラファルサ

「相棒!!」


Naparnik

【ラジャ!!】


二人の、

頭上から、

槍の雨が降り注ぐ。


Ratio

【展開まで…2秒】


チャーリー

「間に合うか」


Naparnik

【シールド展開!!】


空気を、

切るように、

静かに、

透明のフィルターが張られる。


槍は、

貫通することなく、

触れた瞬間に消えた。


Dovira

【先輩、やりますね。次はないですよ。】


真彩

「出てこい、ラファルサ」


ラファルサ

「…」


チャーリー

『相棒』


ラファルサ

『何だ』


チャーリー

『俺等も融合しよう』


ラファルサ

『!?…だが』


チャーリー

『大丈夫』


少佐の、

肩に手を触れた。


チャーリー

『俺は後方で指示を出す。相棒は指示通りに』


真彩は、

天井高く飛び上がる。


ラファルサ

「来るぞ!!」


槍を掲げて、

降りおりてくる。


チャーリー

「それ以上は、させない!!」


少佐の前へ、

立ちはだかる。


Ratio

【危険です!回避を!】


ラファルサは、

中佐を、

押しのけライフルを構える。


――パーン カチャ…


遅れて、

薬莢が跳ねる。


真彩の、

頬をかすめ血が滲む。


それでも、

速度は変わらない。


――パーン カチャ…


止まることもなく攻めてくる。


チャーリー

「無茶だ!!」


ライフルの縁で、

槍を受け止める。


――キィーーーン!!

キリキリキリ…


金属同士が、

軋む音が耳に刺さる。


中佐は、

真彩の表情が、

一瞬、変わったのを逃さなかった。


チャーリー

《痛覚か!!》

『相棒!痛覚が弱点だ!』


ラファルサ

『痛覚…だが』


チャーリー

『わかる…傷つけたくないのは俺もだ』


少佐は、

真彩を振り払った。


真彩は、

後ろ側へ、跳び退ける。


手を、

痛そうに擦っている。


ラファルサ

『…援護を頼む』


チャーリー

『了解』


ラファルサ

《相棒…まだ行けるか?》


Naparnik

【任せろ!】


銃を、

構える。


標準を、

肩へ合わせ。


打ち込む。


――パーン カチャ…


案の定、

姿を消した。


チャーリー

『反時計回り、9時方向、方位…』


言い終わる前に動いていた。


真彩が、

振り向くよりも早く。


首の後ろを、

ライフルの柄で殴った。


Ratio

【Dovira停止。】


Naparnik

【Dovira再起動。】


真彩

「いっっっ!!たああーーーい!!」

空中から落下する。

「ひぃー!!」


背後から、

抱き抱える。


真彩

「またあ!?」

ため息。


少佐と、

共に空中から降りてきた。


真彩

「飛べるの?」


ラファルサ

「飛ぼうと思えば」

《お前も飛んでいただろう》


真彩

「驚愕の事実!!」


不安そうに、

中佐が見つめてくる。


チャーリー

「真彩…」


真彩

「大地…」


駆け寄る。

強く抱き合った。


真彩

「怖かった…」


チャーリー

「ああ」


Dovira

【…あれ?私何してたっけ?】


Naparnik

【…よく壊れませんでしたね。】


ラファルサ

『そこまで強くやっていない…はずだ』


大佐が、

観覧室から降りてきた。


南戸

「終わったのかな?」


チャーリー

「はい」


カルディ

『中佐〜。データなら取れたわよ〜!』


観覧室から、

手を振るカルディ。


チャーリー

『ありがたい』


ラファルサ

「あれが、融合なのか」


チャーリー

「そう。想像を遥かに越えたけどね」


真彩

「ん?ん?」


二人を、

交互に見る。


真彩

「何が?」


Naparnik

【記憶喪失、Doviraだけじゃなかったですよ。良かったですね。】


Dovira

【え?…はて?】


Naparnik

【…あの。お母様、別の意味でDoviraが怖くなってきました。】


Ratio

【特に異常は見当たらないわよ。】


チャーリー

「休憩にしよう」

《真彩の怪我手当しないと》


ラファルサ

「助かる」

《疲れた気がする…》


南戸

「食事にするかね?」


チャーリー

「そうですね」


南戸

「食堂へ案内しよう」

「その前に、直樹くんを起こさねばな」


大佐は、

観覧室へ歩き出す。


真彩

「寝てるんですか?」


後を、

追うように歩き出す。


南戸

「最初は観ていたんだけどね」

「いつの間にか寝ていたよ」


チャーリー

「運動会の疲れがまだあるのかもな」


後ろを、

振り返ると少佐と視線が合った。


ラファルサ

『何だ』


真彩

『別に』



-



チャーリー

「ヨダレ…」


カルディ

「ヨダレよ」


大佐

「垂れてるね」


真彩

「垂らしすぎだろ」


直樹の、

寝顔を見ながら次々と呟いた。


チャーリー

「直樹。起きろ」


真彩

「おーい。ご飯食べようよ」


直樹

「ぅう…ん…」


Naparnik

【寝ぼけてますね。】


Dovira

【可愛い…。】


Naparnik

【やっぱり、Dovira変ですよ!】


真彩

「はいはい」


Ratio

【…中佐、Doviraを点検しますか?】


チャーリー

「もう少し様子見で」


カルディ

「Doviraちゃん調子悪いの?」


チャーリー

「衝撃与えた反動だと思うが」

《……はんどう》


真彩へ、

視線を向ける。


チャーリー

「すまない。先に食堂行ってて貰えます?」


南戸

「ああ。わかった」


カルディ

「わかったわ。どちらへ?」


チャーリー

「医務室」


少佐へ、

振り向く。


チャーリー

「相棒は、怪我してないか?」


ラファルサ

「大丈夫だ」


チャーリー

「先行っててくれ」


ラファルサ

「了解」


チャーリー

「真彩…手当するから付いて来て」


真彩

「わかった」


観覧室を後にした。



-



――35.6595° N, 139.7005° E


夜20時。

渋谷ハチ公前広場。


待ち人。

待つ者。



巨大な街灯ビジョン。

スクランブル交差点。

歩行者信号は赤。

信号待ちの列。


髪を乱す風。


男が居た。

暗くてよく見えない。



歩行者信号が青に変わる。


男は、

動き出す。


一歩、また一歩。



何かに導かれるかの様に、

ゆっくり、

横断歩道へ歩みだした。



信号は、

男が辿り着く前に赤になった。


立ち止まらない。


車が動き出す。


男は、

横断歩道の白線へ足を踏み入れた。


プーーー!!

警笛が鳴る。


男は、

振り向きもせず、歩みを進める。


車は、

速度を落とし、男を避けて通る。



男は、

交差点の中央で立ち止まった。



信号を、

待つ者は騒然とした。


スマホを向ける者。

カメラのフラッシュ。


誰一人、

男へ、

声をかける者は居なかった。



歩行者信号が青になる。

人々は一斉に歩き出す。


男を、

避けるように、空白が出来る。


冷たい視線だけが、向けられた。



録画をする者だけが、

男の前に立つ。


スマホの、

背面ライトが男を照らした。


「じゃーん、兵隊さんでーす!!」

「おじさん、何してるんすか?」


ケラケラと笑う声。


男は、

表情は変えず、

言葉さえもなかった。



男は、

夜空を見上げた。


天より高く。

指先を上げる。


若造は、

釣られて見上げた。


次の瞬間、

――バンッ!!


落雷の様な音。

割れるように鳴り響く。


空が3回点滅した。

まるで、

昼間の様な明るさ。


表参道方面から、地響き。


数秒遅れて、

墜落する音が響いた。



「おじさん、魔法使い?」

「あれ?居ない」


「そうだ!動画!!」

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