親父を追って、山間の村に辿り着いたという
一人の男。
村の入り口には幾つもの鈴が、木で編んだ
簡素な扉に架けられて、風に控えめな音を
鳴らす。其処には山があり、山羊たちが
放牧されている。
戦火は何故か、その村を遠巻きにして
広がって、村には あの方 と呼ばれる
何かが存在している。
神父が遺した日記に記された
恐ろしい事実。
嘗ては余所者として逃れて来た戦傷兵も
今では静かに畑に鍬を下ろす。
宿の女は多くを語らず、何くれとなく世話を
焼いてくれていた。
作者の描く作品の根底にある
静謐 と 愛惜 は
人々が神ではなく悪魔を欲していた という
一文に集約される。
作者は、D.リンチの映画を意識したというが
同時に、F.フェリーニの『道』やU.エーコの
『薔薇の名前』をも彷彿とさせられる。
きっと、ため息が漏れるだろう。