時給581円の勇者様~異世界なんて聞いてません!~

結城ノア

第1話 勇者始めました

(勇者募集中? なんだこりゃ?)


 アルバイトを探していた佐藤悠斗(さとう ゆうと)は、とある動画を見て頭の上に大きな「??」が浮かんでいる。


 朝マックで動画を見ながら、いつものマフィンセットを片手に縦型動画を見ていたとき、悠斗はたまたまその動画に出会った。


 RPGの勇者がコンビニでバイトをしているその動画。


 手が込んでいてなかなか面白い動画だ。


 今はAIを使って、簡単に誰でもコンテンツが作れる時代。アイデアさえあれば、それをすぐに形にできる。


『気になった方はこちらをチェック!』


 というリンクがある。気になったので押してみた。すると、アルアバイト募集のページへと飛んだ。


 家からも近いし、コンビニのバイトなら、自分の周りでもやっている人が多いので安心かも知れない。応募してみようかと思った悠斗だったが、ひとつ気になることがあった。


(時給581円って…これっていいのか?)


 今の時代、最低賃金は1000円を超える。きっと何かの間違いだろうと思い、問い合わせフォームに「バイトしたいです」という旨のメッセージをかいた。


 返事はすぐに来た。


 30分後に面接をすることになった。


 履歴書も特に必要ないようだ。


 悠斗は面接会場であるコンビニへと向かった。


 緊張した面持ちで店に入る。


 「いらっしゃいませー!!」


 威勢のいい掛け声が店内に響き渡る。


 悠斗は後ずさりをしながら店を出ようとした。


「あ、こらこら、せっかく来たんだから何か買うてって!」


 頑固おやじのラーメンの店主が良く似合いそうな感じの店員が悠斗に言った。


 店員の胸には「店長」の札があった。


(こ、この人が店長…さん? コンビニよりも居酒屋にいた方が似合うのに…)


 悠斗が戸惑っていると…


「おや? 君はもしや…アルバイトに応募してくれた人かい?」


 目力!


 なんだか目力のある瞳に圧倒され、悠斗は思わず「はい」と返事をしてしまう。


「おーやっぱりそうか! そうやないかと思ったんや! 採用!」


「はい?」


「だから、採用! いつから働ける? えっ? 今から? それはありがたい。じゃあ、こっち来て!」


 カウンターの向こうから出てきた店長が、悠斗の手を引きバックヤードへと連れて行こうとする。


「あ、まだ働くなんて言ってません! あっ、ちょっと!」


 バックヤードに連れ込まれた悠斗。部屋の中にはこれから並べられるであろう商品や、店の備品などがある。


 奥の方で店長がごそごそと何かを探していた。



「じゃあ、今日からよろしく!」


 と言って、悠人に何かを手渡した。


「えっ…こ、これって…」


「そう、今日から君は、時給581円の勇者様だ」


 渡された防具と武器を持ったまま、唖然とする悠斗であった。

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