美しい声を持つ主人公が歌いながら下校していると、神社の鳥居の奥に「何か」が現れ、不気味な声が聞こえる。
声はもっと歌うよう主人公に命じるのだが――。
知らずに禁忌に触れてしまった主人公が怪異に遭う、という展開はホラーの定番ともいえますが、この物語はそれだけでは終わりません。
どう「終わらない」のか――それはぜひあなた自身の目で確かめてみてください。
また、文章や表現もめまいがするほど素晴らしく、読んでいると雨の匂いが漂ってきたり、空気が湿ってきたり、霞んだ景色が目の前に浮かび上がってきたりするような気がします。
どうすればこんな文章を紡ぎ出せるのか――作者様の爪の垢を煎じて飲みたいくらいです!(不快に思われたら申し訳ありません……)
Singin' in the Rain♪
雨に唄えば。有名なミュージカル映画にもある通り、どこか軽快で心が浮きたちそうなイメージですね。
雨降りの日は憂鬱で、傘をさしてじっと俯きながら歩くしかない。
そんなイメージもあるけれど、一度雨なんか気にせずに、雨の日をひたすら楽しんでみる。そして楽しく歌を歌ってみる。
きっと、見える世界が変わりそうな、前向きなイメージに満ちています。
そんな「雨に唄えば」を実行してしまったある人物が主人公。傘を差しながら歩く途中、ふと歌を口ずさむ。
それによって、「とある変化」が身の回りで起こることに。
雨の日に唄うと何が起こるか。心が軽くなるだけで済めばいい。でも、世の中には「特別なこと」に手を染めると、「何か」を蠢かせてしまう恐れというものがある。
雨の日というのは、どこか普通とは違う「異界」と繋がっているような雰囲気がある。
「夜に口笛を吹いてはいけない」という言葉もあるように、雨の日にだって独自のルールがあるかもしれない。
本作は、そんな現世と異界が交錯する特殊な時間が描かれているのが魅力的でした。異界の住人を刺激するルール。それを知らずに破った先で待つものは……。
【レビューコンテスト応募】