婚約者である王太子から突きつけられた、あまりにも身勝手な要求。
ここから痛快な婚約破棄が始まるのかと思ったら、この物語はもう一段面白かったです。
主人公シエラは、怒りに任せて盤上から駒を投げ捨てたりしない。
自分が置かれている状況を見つめ、相手の思惑を読み、これまで身につけてきた知識を総動員して、「では、この条件ならどうでしょう?」と次の一手を探していく。
自分を縛るはずだった王太子妃教育さえ、反撃のための知識へと変えてしまうところが爽快でした。
そして何より、シエラがただ冷静で完璧な令嬢ではないのが好きです。
長い年月をかけて身につけた振る舞いの奥には、傷ついた心も、諦めたものも、ずっと胸にしまってきた想いもある。
だからこそ彼女が選ぼうとしている一手には、「ざまぁ」の爽快感だけではない切実さがあります。
王太子が用意したつもりの盤上で、本当に先を読んでいるのはいったい誰なのか。
タイトルの意味が物語と重なり始めるにつれて、俄然この先が楽しみになりました。