六本の塔を回らず、塔と塔のあいだを測りました

 計器は十四台しかなかった。


 供給塔は残り六本。塔の送出量と王都の到着量は、どの経路でも合わない。


「六本を順に回れば、四十日かかります」


 リゼッタが行程表を伏せた。


「三か月しかない国で、四十日は使えません」


 王宮の技師は、塔をもう一度点検するべきだと言った。塔には記録があり、記録があれば責任の所在がはっきりする。彼の言い分は間違っていない。


 ただ、岩橋で分かったことは逆だった。


 漏れていたのは塔ではなく、塔と塔のあいだの、誰の管轄でもない場所だった。


「塔は測りません」


 俺は言った。


「あいだを測ります」


 技師が眉を寄せた。


「あいだには何もありませんよ。ただの導線です」


「何もない場所で減っているなら、なおさら測る必要があります」


 光輝が地図を広げた。


 彼はまず、六本の塔の位置ではなく、導線が谷を越える箇所を指でなぞった。


「塔と塔のあいだに、橋か岩盤の裂け目がある場所が、七つあります」


「読んだのか」


「岩橋の報告書に、地形の条件が書いてありました。同じ条件の場所を先に見たほうが早いかと」


 剣を抜かない勇者は、地図を読む勇者になっていた。


 十四台の計器を、七か所へ二台ずつ置いた。上流側と下流側に一台ずつ。残りの一台は予備にした。


 計器は重い。木箱に入れて麻布で包み、荷車で運ぶ。


 高台の道は雨で崩れていて、最後の一里は人が担いだ。俺は担ぐ側にいた。風で荷は軽くならない。


 三か所目の集落で、俺たちは一晩泊めてもらった。


 夕食は麦の粥と、塩漬けの豆が少し。子どもが先に食べ、大人は残りを分けた。冷蔵倉が止まっているので、肉は塩でしか保たない。


「計器を置いても、誰が読むんです」


 宿を貸してくれた男が聞いた。


「王都から人が来るんですか。来ないでしょう」


 俺は答えに詰まった。


 四十日かかるという話は、そのまま「誰も来ない」という意味だった。


「読み方を、こちらで覚えていただけませんか」


 リゼッタが言った。


「難しくありません。朝と晩に針の位置を写すだけです。数えるのは王都でやります」


「間違えたら」


「間違えた記録も残してください。合っている記録だけ集めると、合っている場所しか分かりません」


 男は少し笑った。


「妙なことを言う人だ」


 それでも、翌朝には子どもと一緒に針を写していた。


 七か所すべてに、読む人がついた。


 王都から人が行かなくても、数字が上がってくる形になった。


 九日目、最初の差が届いた。


 北から二番目の塔と三番目の塔のあいだで、上流と下流の差が月に二百単位を超えている。


 岩橋ほどではないが、小さくもない。


「ここも裂け目ですか」


 光輝が聞いた。


「分かりません。行けば分かります」


 だが、俺たちが行くころには次の差が届いているはずだった。


 七か所のうち、差が出たのは四か所。


 残り三か所は、ほとんど減っていない。


 減っていない場所があることのほうが、俺には重かった。


「同じ導線で、減る所と減らない所がある」


 リゼッタが記録を並べた。


「造られた年が違います。減らない三か所は、四十年前の敷き直しが入っている」


 つまり、直せば止まる。


 止められるものを、四十年止めなかっただけだった。


 王都へ戻る荷車の上で、俺は数字を足した。


 四か所の合計は、月に約九百単位。三か月なら、王都のおよそ十一日分。


 配給表をどれだけ細かく削っても、十一日は出てこない。


「削る話は、もう終わりですね」


 光輝が言った。


 彼は地図を畳みながら、俺ではなく前を見ていた。


「次は、直す話です」


 直すには金と人が要る。準備金からも魔力を出す。


 削る話しかしてこなかった会議へ、初めて「使う」提案を持ち込むことになる。

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